トップオピニオン記者の視点増え続ける不登校の処方箋【記者の視点】

増え続ける不登校の処方箋【記者の視点】

個々の肯定感高めてあげよう

編集委員 太田 和宏

文部科学省が10月31日に公表した「問題行動・不登校調査」で、全国の小中学校で2023年度に学校を30日以上欠席した不登校の児童生徒は前年度から4万7434人(15・7%)増の34万6482人となり、過去最多を記録した。不登校の増加は11年連続で、10年前と比較すると小学生は5・4倍、中学生は2・3倍となっている。高校(6万8770人)も過去最高で小中高合わせて41万5252人に上った。

文科省によると、23年度の増加の背景として新型コロナウイルス禍による生活のリズムの乱れを引き金に登校意欲を失ってしまう子供が多い。また、保護者の認識にも「子供が行きたくないと言うなら行かなくても……」という風潮が見られるようになったことが挙げられる。

スクールカウンセラーの講演会に行くと、「学校へ行きたくないという子供の言葉を鵜呑(うの)みにしてはいけない」という話が出る。言葉以外のサインにも気を配り、表情の変化、いつもと食べる量が減ったなど、普段と違う様子を見せている場合が多いという。また、「個々の児童生徒にいろんな事情、原因があり一括(くく)りにできない」という声も聞く。保護者が学校に行かせることに固執した場合、自傷事件を起こしたり、最悪の場合自殺することもあり得る。追い詰め過ぎないよう気を付けながら休んだ時の精神的なフォロー、コミュニケーションを一層密にすることが重要だ。

不登校で家族も心を痛めているが、一番苦しんでいるのは本人だ。窓から同年代の通学風景が目に入れば、親に言われるまでもなく、行った方が良いのは分かっている。だが、いろんな事情で行けない自分がいる。学校でも、家庭でもない、第三の居場所(フリースクール、こども食堂など)に行けるならば、まだ良い方だ。

また、担任の先生から課題が出され、取り組んでいれば良いが、不登校の児童生徒は有り余る時間をスマートフォンでゲームや情報サイトに接続して深夜遅くまで時間をつぶす。眠くて朝起きれない、学校に行けないの繰り返しとなる。学校であれば、居眠りしていると授業を担当している教師から注意される。不登校の児童生徒は好き勝手な時間の使い方をしても、誰からも注意されない。

完全に子供の自由にしてしまうと、なかなか不登校から脱出できなくなる。「学校を休むくらい、辛(つら)いなら、寝ているか、本を読むくらいだよ、スマホを使ったり、テレビを見るのは一日何時間までだよ」と最初からルールを決めることが必要だ。

精神科医の斎藤環氏は課題解決の手立てとして、経済的な後ろ盾、個人の存在基盤を確保してあげた上で、否定され続けてきた“不登校生活”から脱却させてあげることが重要だとしている。そのためには、心の余裕を持って、あいさつなど些細(ささい)な言葉掛けから食事メニューの相談、洗濯物の取り入れ、相談相手になってもらうなど存在意義を持たせてあげ、自己肯定感を高めてあげることが必要だと言う。

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