編集委員 床井 明男
わが家の桜はもう満開を過ぎて、花びらが落ち始めている。嘘(うそ)ではない。ベランダに置いていた鉢植えの河津桜を部屋に入れることになり、1月8日にリビングの窓際に置くと蕾(つぼみ)が色づき始め、23日には開花してしまったのである。
部屋に入れたのは桜だけでない。植物好きの家内と共に集めたツツジやアジサイ、クチナシ、沈丁花(じんちょうげ)、月桂樹などの鉢と、撫子(なでしこ)やヒヤシンスなど小物を載せた3段棚のラックで、もともと天井まで伸びた観葉植物のパキラや幸福の木があるリビングは今、一部が植物の森と化している。
理由は入居するマンションで大規模な修繕工事を行うため、昨年12月半ばの告知に、外壁や鉄部の塗装、防水などの作業を実施するので、工事が始まる1月半ばまでにベランダに置いてある物品の移動を、とあったからである。
3月末完了の予定で、足場組み立てから始まり、その回りにシートも張り巡らされて、現在は外壁タイルのチェックなど作業が本格化している。
わが家は賃貸だが、分譲では大きな出来事が起きている。
不動産経済研究所によると、昨年の東京23区の新築マンション平均価格が前年比39・4%上昇の1億1483万円と年間で初めて1億円の大台を超え、バブル末期1991年の最高値(8667万円)を大幅に上回ったのである。
最高額45億円の「三田ガーデンヒルズ」(港区)など都心部で超高額物件が多く売り出されたのが主因で、富裕層向け1億円以上の高額物件いわゆる億ションは4174戸と、23区の発売戸数の3割超を占め、これまで最多だった90年の3079戸を大幅に更新。販売総額も2年ぶりに2兆1000億円台に上った。
首都圏(東京都、神奈川、埼玉、千葉各県)全体の平均価格も28・8%上昇の8101万円と過去最高を更新した。
平均価格の大幅アップには、物価高による建設コストや人件費の高騰の影響も忘れてはなるまい。
発売戸数は、23区が10・3%増の1万1909戸、首都圏全体では9・1%減の2万6886戸。23区で高級・高額物件がいかに積極的に供給されたかということである。
同研究所によると、24年の首都圏の発売戸数は前年比15・3%増の3万1000戸の見通し。23区では用地取得が厳しくなっているほか、高額のため購入を諦める動きも出ており、「東京23区の近郊エリアでの供給が目立つ年になる」という。平均価格こそ昨年ほどではないにしろ、供給は活発になりそうである。
活況と言えば、新年早々からバブル後最高値を更新し続けた株式市場である。
企業業績が好調なことや1月から始まった新NISA(少額投資非課税制度)など株式市場を取り巻く環境は基調的に好条件が整っている。本格化した24年春闘賃上げ交渉も、大手企業からは労働側の要求以上の賃上げを表明する企業が相次ぐ。
物価上昇が落ち着きを見せ始めており、相応の賃上げが実現すれば、さらに好条件が加わる。証券会社が囃(はや)す「史上最高値更新」もそう遠い話ではない気がする。