【記者の視点】故ジャニー氏の「性嗜好」母亡くした幼児体験との関連は

編集委員 森田 清策

弊紙「メディアウォッチ」欄(11月30日付)で、故ジャニー喜多川氏による性加害問題を取り上げるため、旧ジャニーズ事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」の調査報告書を読んだ。8月29日公表だから、遅ればせながらの一読となったが、そこに気になる単語があった。「性嗜好(しこう)異常(パラフィリア)」だ。

精神医学の専門用語で、一般の人間にはあまりなじみのない言葉だが、かつては「性的倒錯」と言われたこともある。性道徳や社会通念から逸脱した性嗜好と考えれば分かりやすいだろう。

報告書は「性愛の表現形が異常な、強烈かつ持続的な性的関心を特徴とする」と説明。20歳頃から80歳半ばまで、性加害を繰り返してきたジャニー氏にはパラフィリアが存在していたことが強く裏付けられる、としている。

パラフィリアにはさまざまな類型がある。よく耳にするのは性的マゾヒズム・サディズムだ。ほかには、フェティシズム(異性の体の一部など性的な興奮や衝動の対象の異常)、異性の服装をする服装倒錯、露出症、子供(13歳以下)に性的興奮を持つ小児性愛(ペドフィリア)などがある。

ジャニー氏の性加害被害者は、主に13~15歳の年齢層で、小児性愛に比べると「定義上は若干高くなるものの、まさに性嗜好異常の一型とみなすことができる」と、報告書は指摘。さらに同氏の性嗜好について、姉の故メリー氏は「病気だから」と述べていたという。

病気なら治療すればいいじゃないか、と考える人がいるだろうが、ことはそう簡単ではない。そのメカニズムが解明されておらず、現在の精神医学では治療の対象にしていないのだ。ここではパラフィリアが病気かそうでないのかには踏み込まないが、異常な性嗜好を持つようになる要因は気になる。

ネット上の医学事典MSDマニュアルプロフェッショナル版によると、パラフィリアについて「通常、異常な性的興奮のパターンは思春期前にかなり発達する」としながら、関係するプロセスの一つとして「不安または若年で経験した心理的な外傷によって性心理の正常な発達が妨げられる」と、幼児期に負ったトラウマ(心的外傷)が関係している可能性を示唆している。

報告書には、ジャニー氏と、4歳上のメリー氏は「戦前、戦中、戦後の日本とアメリカでの暮らしの中で、幼い頃から姉弟で苦楽を共にしてきた間柄」とするとともに「ことにジャニー氏が2歳のときに母親が他界してからは、メリー氏が母親代わりとなって末弟のジャニー氏に愛情を注いでおり」とある。

LGBT問題の取材で、幼児期にトラウマを負った過去を持つ、少なからぬ当事者に出会ってきた筆者がこれを読むと、2歳で母親を亡くし苦労したこととジャニー氏の性嗜好に何か関連があるように思えてくる。

性嗜好と性的指向の違いは何か、そしてこれらは変えることができるのかについては、LGBT問題の重要論点だが、新年には、自己のトラウマと向き合い性嗜好や性的指向を変えようと苦悶(くもん)する当事者たちの姿を読者に伝えたい、と考えている。

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