サンデー編集長 佐野 富成
今年もはや12月を残すのみだが、振り返ってみると宗教と政治の関係、宗教団体への解散請求を巡る問題、政治と金の問題、その他にもネットを介した犯罪など心が重たくなるような話が多かったが、ことスポーツ界を見ると男子の球技が大躍進の年となったといっていい。
3月に日本、米国(決勝トーナメント会場)などで開催された野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で大谷翔平選手を擁する日本が3度目の優勝を飾った。大谷選手がロッカールームで語った「憧れるのをやめましょう」の一言は話題となった。
ある意味、この一言が国際大会に挑む選手たちの合言葉になったとも言える。野球は、来年のパリ五輪では正式種目に採用されなかったが、次のロサンゼルス大会(2028年)では、ソフトボールと共に採用される方向だ。
昨年11月から12月にかけて開催されたサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、ドイツとスペインというW杯で優勝経験のある2カ国をともに逆転の2-1で破った男子サッカー。日本はベスト16止まりだったが、世界を驚かせ、代表を率いた森保一監督は引き続き3年後の26年大会を目指すこととなった。9月9日には、W杯で敗れたドイツが自国での親善試合に日本を呼び寄せリベンジマッチを図ったが、結果は堂々とした試合運びで4―1と日本代表がドイツを破り、再び驚かせた。2021年就任以来、ドイツを率いてきたハンジ・フリック監督が、日本に2度敗れたことで解任されるおまけまで付いた。英国BBCによると1926年に同国代表監督が創設されて以来初めての解任だった。続く、12日のトルコ戦も4―2で勝利したことで、同監督も解任されたという情報が飛び交った。その後、日本代表が圧倒的強さで連勝をし11月21日、W杯アジア2次予選B組の第2戦でシリア代表(5―0)に勝利し、親善試合を含め8連勝で今年を締めくくった。
一方、ここ数年、結果が伴わず苦しんでいた男子バレーボール。フィリップ・ブラン監督の下、高(※はしごだか)橋藍選手、石川祐希選手など海外でプレーする選手たちと国内組を融合し、10月7日のパリ五輪予選大会でスロベニアに勝って、来年開催のパリ五輪への切符を自力でつかんだ。2008年北京五輪以来の出場となる。これまで世界の壁に阻まれていた日本。レシーブ力(ボールを拾う)と遊び心を加えた「フェイク(変則)」プレーや強烈なスパイカーを駆使し、これまでとは違う姿を世界に見せた。
男子バスケットボールも東京五輪で女子を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督の下、スタイルを先行逃げ切りから差し切り(後半に追い付き逆転する)スタイルに変更。五輪出場を懸けたワールドカップ順位決定戦の9月3日のガボベルデに勝利し、1976年モントリオール五輪以来の出場を自力で手にした。
その他、ハンドボールも悲願の五輪の切符を韓国を破って勝ち取った。
これまで、球技に関して、ややもすると男子は女子に隠れがちだった。それだけに来年のパリ五輪では、これまで男子競技で振るわなかったバレーボール、バスケットボール、そしてゴール前のせめぎ合いが魅力的なハンドボールに注目してほしい。