【記者の視点】中国の報復輸出規制 希少金属の中国依存から脱却を

編集委員 池永 達夫

中国は1日から、半導体材料に使う希少金属(レアメタル)のガリウムやゲルマニウムなどの輸出規制に踏み出した。次世代半導体の素材となるガリウムはパワー半導体などに使われ、ゲルマニウムは半導体工程用のガス生産に使われる核心的素材の一つだ。

この措置に対し中国外務省報道官は「いかなる特定の国も念頭に置いていない」と説明するが、西側諸国における最先端半導体の対中輸出規制への報復であることは鮮明だ。

バイデン米大統領は昨年10月、中国に対し半導体製造装置などを含んだ最先端半導体の輸出規制措置を発表した。中国に流出した最先端半導体技術が軍事転用されることを懸念した措置だった。

米国は西側主要諸国にも協力を求め、わが国やオランダは年初、半導体製造装置の対中輸出規制を決めた。わが国は先月23日、先端半導体に必要な製造装置など23品目で対中輸出規制を実行に移した。オランダも9月から、先端半導体製造装置の対中輸出規制をさらに強化する。

習近平政権はハイテク国家戦略「中国製造2025」で、2025年までに自国産半導体の割合を7割にまで高めようとしていた。最先端半導体を含む半導体製造能力の向上こそは、人工知能(AI)などの科学技術を飛躍的に高め、軍備のグレードアップに寄与するハイテク兵器には必須となっていた。

中国が今回、ガリウムなどの輸出規制に踏み出したのは、困った西側諸国が音を上げ、あわよくば先端半導体製造装置の対中輸出規制解除にまで持ち込みたいとの思惑がある。

それだけ西側諸国の対中輸出規制が効いたということだ。

財界の中には、どちらの利益にもならないことだからと規制解除を求める声がある。だが、ここはレーニンが言った「やつらは自分の首を絞めるロープも売る」との言葉を思い返すべきだ。

まともな隣国であれば自由貿易を封印する今回の手だては禁じ手となるが、いびつな歴史観の下、国家の野心を隠さなくなった中国に先進技術供与によるハイテク軍事大国化への道を許せば、西側諸国はいずれその中国と対峙(たいじ)しなくてはならなくなるのだ。

ただ中国の輸出規制は「もろ刃の剣」だ。

尖閣諸島沖で10年に起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突事件を受け、中国はレアアース(希土類)の対日輸出規制に踏み切ったが、わが国はレアアースショックを乗り越え、対中輸入依存度を低減させることに成功している。

今回も、ガリウムがアルミ製錬時の副産物として抽出されることから、インドやカナダなどのアルミ生産国がガリウム生産体制を整備すれば中国依存体制から脱却できる。褐炭や亜鉛製錬時の副産物として抽出されるゲルマニウムも同様だ。

チキンレースでは、痛みや怖(おそ)れに打ち勝ち「肉を切らせて骨を断つ」覚悟こそが問われる。

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