編集委員 床井 明男
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行して早々、コロナ陽性になってしまった。コロナ禍の3年間、特に昨年の春に長男が陽性となり、同居家族として濃厚接触者になっても免れてきたのにだ。
やはり、5類移行に安心し過ぎたようだ。マスクを外すことも、確かに多くなっていた。外を歩くとき、会話をしなければ感染はしないと言われていたから、外ではほとんどマスクはしないでいたし、通勤の電車内でも話をしなければ大丈夫と外すことも。慢心というか油断だった。
自宅療養では幸い、発熱と咽喉(のど)が少し痛んだ程度で済んだが、それでも最初の数日は37度後半から38度台の熱で冷たい物しか咽喉を通らず、熱が下がってからも少ししか食べることができない。昨年11月から始めた1日30分以上の散歩でも落ちなかった体重が、1週間で3キロも落ちた。
今回のコロナ罹患(りかん)では、家人にも会社にも迷惑を掛けたが、経済記者として5類移行は気分的には悪くない。コロナ禍に伴う行動制限がなくなり、経済活動が正常化に向け動きだしているからだ。
長い目で見れば、コロナ禍でのさまざまな経験も決して無駄ではなかったかもしれないが、多くの人が亡くなったのをはじめ、経済的にも犠牲や負担が大きかった。
やっと迎えた経済活動の正常化でコロナ前の状態を回復できればいいが、諦めて店を畳んだ所も決して少なくないだろう。今回のコロナ・パンデミック(世界的大流行)での経験は、次に起こるであろうパンデミックに備え、その犠牲と負担を最小限にとどめられるよう政策当局には政策の宜(よろ)しき選択に生かしてほしい。
種々の経済指標から、コロナ禍からの回復傾向が鮮明になってきた。企業決算や日銀短観(全国企業短期経済観測調査)などでも、これまで苦境にあった飲食・宿泊サービス業や百貨店・航空・レジャー業界などの業績が上向いている。コロナ前の水準にはまだ届いてはいないが、経済活動正常化の象徴的な表れとして消費の回復を喜びたい。
春闘も今年は、大手企業の定期昇給を含む月例賃金の引き上げ率が3・91%(1万3110円)と前年(2・27%、7430円)を大きく上回り、30年ぶりの水準になった。300人未満の中小企業でも平均で3・35%(8328円、連合調査5月10日時点)と30年ぶりの伸びだ。
賃上げの高い伸びには、もちろん、昨年から続く歴史的な物価高という背景がある。昨年2万5000超の品目に及んだ食品の値上げは、今年も相次いでいて、これまでに公表された分で既に昨年の水準に肩を並べたという(帝国データバンク調べ)。
全国消費者物価は4月も前年同月比3・4%上昇と依然高い伸びが続き、実質賃金は12カ月連続でマイナスが続く。
食品値上げは一定の原材料高対応が終わり、値上げの公表ペースは落ちているという。物価高も伸び率は減少傾向にあり、実質賃金もマイナス幅が減ってきている。海外経済が良くない分、内需に期待が懸かるが、電力7社で電気料金が6月使用分から値上げとなるなど値上げ圧力は依然小さくない。消費は引き続き好調さを維持できるだろうか。