トップオピニオン記者の視点【記者の視点】学力の基本「読む」「書く」 AIを超える人間力を育みたい

【記者の視点】学力の基本「読む」「書く」 AIを超える人間力を育みたい

UnsplashAnita Jankovicが撮影した写真

編集委員 太田 和宏

今年小学校に入学した子供が一人前の社会人になる2050年ごろ、日本の人口は現在より2800万人ほど減り、高齢化率約4割、サービス産業や単純労働はロボットや機械に取って代わられていく。今では考えられないほど先行き不透明な時代になっていく。子供たちには人工知能(AI)には無い「人の気持ち、人間関係を理解する」「非合理的でも利他的な行動」といったもので、新たな時代を切り開く“人間力”を育んでもらいだい。

教育の世界は「知識を蓄え、良い成績を取り、良い学校に入る」ということから「未来を生き、担える子供を育む」という方向に転換していくであろう。考える素地となる「読む」「書く」は必要だが、これまでにない課題に対して、AI機器から得た知識を利用しながら、自ら考え、創造していくことが必要になる。

どんな難問でも、視聴者に分かりやすく解説してくれる元NHK記者のジャーナリスト池上彰氏は「コピペやフェイク紛(まが)いの『エセ情報』が、インターネットやSNS、さらに日常会話にまで溢(あふ)れている。安易な“分かりやすさ”を売りにするバラエティー番組は、事態をさらに悪化させている」と行き過ぎた“要約や、出所不明のまとめ”に警鐘を鳴らしている。

新聞や本は構成段階から多数の専門家が関与し、論理展開や誤字脱字をチェックして作製されているので、「いろんな見方」があるものの、きちんとした方向性が示されている。こうした「モノの見方・考え方」を基本にしてインターネットやSNSの使用をしたいものだ。

ネット社会で「チャットGPT」という対話型のAIが関心を持たれている。いろんな質問をすると、まずまず妥当な回答を自然な日本語で回答するシステムだ。人工知能の発達が著しく、論文を書いたり、基礎情報を与えて、文章を書かせることも、可能な時代になっている。

生まれた時からネット環境があった子供たちは、音声認識でAIに質問し対話しながら創作や仕事をこなす時代になっていく。そんな社会を受け入れながら、批判的にも見るような視点が必要だ、とチャットGPT自身がアドバイスしてきていると聞く。

苦労して見つけた答えは、頭の中に残りやすく、分かりやすいことは頭の中に残り難いという。また、いろいろなものを通して調べ、文章や図にまとめ、発表することで頭の中に定着するとも言われている。

千葉大学特任教授の天笠茂氏はどんな教科においても「学びの基本は読む、書く」ことだと言っている。読んで頭の中にインプットし、語り合ったり、文字化しアウトプットすることで、頭の中に定着するということだ。簡単に分かることは「ああ、分かった」と表面的に理解しても、さらに深く追求しようというモチベーションを保つことにはつながらない。子供たちには「知った嬉(うれ)しさ」「分かる喜び」を持って、より深い知識を求める心、生涯の宝となる学ぶ楽しさを育んでほしいものだ。

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