トップオピニオン記者の視点【記者の視点】「同性婚」巡る憲法論争 護憲派に改憲の扉開ける矛盾

【記者の視点】「同性婚」巡る憲法論争 護憲派に改憲の扉開ける矛盾

編集委員 森田 清策

「私はいつ愛する人と結婚ができるのでしょうか」

ゲイであることを公言している石川大我参院議員(立憲民主党)は参議院予算委員会(6日)で、こう語って岸田文雄首相に同性婚の制度化をいつ実現させるのかと迫った。

これに対して、岸田首相は「家族観をはじめ国民に広く関わる問題だから、こうした議論について国民の理解や議論が深まらなければならない」と答弁した。賛成・反対を明言せず国会での議論や世論の動向を見ながら対応を決めるというのである。「検討する」を多用することから、「検討(遣唐)使」の異名を取る首相らしい答弁と言える。

憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」という文言がある。3年前の同予算委で、石川氏がその趣旨は「自分の望む相手と自由に結婚できるという権利ではないか」と、当時の安倍晋三首相に見解をただした。

現行憲法には「両性の合意」のほか、「夫婦」の文言もある。だから、安倍氏は「現行憲法下では、同性カップルに婚姻を認めることは想定されていない。同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきかどうかということは議論されてしかるべきかもしれないが」と述べ、同性婚のための憲法改正論議は否定しなかった。憲法が同性婚を想定していないことは内閣法制局の見解でもある。

だが、立民は6日、同性婚を可能とするための民法改正案を衆院に提出した。「夫婦」などの文言を「婚姻の当事者」と表現を変える内容だ。これでも分かるように、憲法の「両性の合意」を「当事者の合意」と解釈し、現行憲法の下でも同性婚法制化は可能との立場を取っているのだ。憲法が想定しない同性婚を“解釈改憲”で実現しようというのである。

では、同性婚を巡る憲法解釈で、推進派がすべて立民と同じ立場を取っているのかと言えば、そうではない。石川氏と同じく当事者であることを公言する元参院議員の松浦大悟氏は「同性婚には賛成」としながらも、次のように反対する。

「真の立憲主義の観点から正々堂々と憲法を改正し、日本社会に住む私たちの自らが同性婚を選択したのだという『国民の記憶』を残すことが大切だと考えるからです」(著書『LGBTの不都合な真実』)。そして「左派の憲法学者が唱える解釈改憲での同性婚は、私には憲法9条改憲への扉を開かせないための弥縫(びほう)策」に思えてならないのだという。

「愛する人となぜ結婚できないのか」という石川氏の訴えは婚姻制度の意義を狭く捉え過ぎだ。本来は当事者の意思だけでなく、カップルの下で育つであろう子供への影響も含めて、その是非を考えるべきものだろう。その観点から、筆者は同性婚には反対の立場だが、憲法改正を行った上で、同性婚を法制化すべきだとする方が立憲主義にかない、筋の通った主張のように思える。

立民は集団的自衛権の一部容認では、立憲主義に反するとして猛烈に反対した。立憲主義を唱えるなら、率先して憲法改正による同性婚の法制化を主張すべきだろう。立民だけでなく推進派が護憲派と重なっているところに、同性婚問題のジレンマがある。

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