編集委員 床井 明男
仕事柄、年に2回の定期健診を受けている。前回昨年11月の健診では、予期していた通り、幾つかの項目で赤数字が増えてしまった。ここ数回改善傾向が進んでいたことで油断したのか、夜遅くの食事が多くなっていた。検査は正直である。
結果を受け取った12月上旬以降、診断書のアドバイス通り、夜遅い食事はやめて出社前に済ますようにし、海藻、野菜を多く摂(と)るようにした。また、引っ越し前後で中断していた散歩を復活。毎日とはいかないが、1日30分以上、余裕があれば1時間半ぐらい近所を歩いている。
引っ越してもうすぐ1年になるが、新しい街の散歩はやはり新鮮で、少し大袈裟(おおげさ)に言えば、驚きの連続である。公園や神社、お寺もいいが、民家やマンションなどの庭先を見て歩くのも楽しい。
知らない、また珍しい花や木に出合うと、家人に知らせたく、スマホで写真に収めたりしている。今は蝋梅(ろうばい)が見頃で、紅白の梅も咲きだしている。今週は今冬最強寒波の襲来で埼玉も肌を刺すような寒い日が続いたが、そんな中にも花を咲かせる梅の凛(りん)とした姿には潔さを感じずにはおれない。
厳しい環境は日本経済も然(しか)り。3年も続いたコロナ禍からようやく回復しつつあるが、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、原油や小麦など資源価格が高騰し、物価高が進行している。日銀の金融政策の影響もあって過度な円安が進み、物価高には拍車が掛かった。
消費者物価は昨年11月が前年同月比3・7%上昇、12月は4・0%上昇と41年ぶりの高い伸びになった。上昇は16カ月連続。賃金も伸びてはいるが、それ以上に物価が上がっているため、インフレを加味した実質賃金は最新の昨年11月で3・8%減と8カ月連続のマイナスである。
欧米では利上げが進んだことで景気後退が懸念され、中国は「ゼロコロナ」政策が破綻、コロナ感染の爆発で経済が混乱するなど、主要国の景気は変調を見せている。輸出環境が今年は厳しくなっていきそうである。
今年は癸卯(みずのとう)の年。どんな年かネットなどで調べてみると、「癸」は静かで温かい大地を潤す恵みの水を表し、十干の最後に当たるため、生命の終わりと新たな生命の成長という意味を持ち、「卯」は安全や温和のほか跳ね上がるという意味がある。要は今までの努力が実を結び、勢いよく成長し飛躍する年というわけで、運勢的には悪くない感じである。
果たして、現実はどうだろう。悪条件を挙げてきたが、好条件ももちろんある。コロナ禍に伴う行動制限がなくなり、経済活動の正常化が進むにつれ、百貨店・スーパーの売り上げや鉄道・航空などの需要が伸び、消費は回復傾向が続く。
日銀の大規模緩和修正で過度な円安も修正されてきた。「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングなど大手で5%かそれ以上の賃上げを実施する企業が出てきている、などだ。
「インフレ率以上の賃上げ」がなるかは中小企業の動向に懸かっている。年頭の記者会見でそう期待を語っておきながら、増税表明でムードを壊して「どうする首相」。