政治部長 武田 滋樹
岸田文雄政権の支持率が低空飛行を続けている。昨年12月の調査では毎日新聞25%、朝日新聞31%といずれも過去最低を記録し、今年1月の調査でもNHK33%(最低)、読売新聞39%(横ばい)、時事通信26・5%(最低)と低迷している。野党第1党の立憲民主党の支持率も一向に上昇機運に乗れない。1月の調査でNHKは5・7%、読売は6%、と5%ラインをやっと超えているが、時事は前月比3・0%減で過去最低の2・5%となり、日本維新の会(3・6%)や公明党(3・3%)の後塵(こうじん)まで拝する結果となった。
とりわけ、共産党並みに旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害問題に取り組み、臨時国会で維新と共闘して政府・自民党を追及し、いわゆる被害者救済法の会期内制定に追い込んだ自負があるだけに衝撃が大きい。
このように内閣と野党第1党の支持率がともに低迷しているのは、政党政治への不信の深まりを示唆している。さまざまな理由が考えられるが、ここでは、政党が党名として掲げる政治的な理念が軽んじられ、羊頭狗肉の状況になっていることを指摘したい。
自民党は文字通り自由民主主義の価値を最も重んじる政党だ。しかし首相は昨年、旧統一教会に対し、まだメディアが批判的に騒いでいるだけの段階で「社会的に問題が指摘されている団体」と規定し、関連団体まで含めて政府のトップに立つ政務三役や自民党との関係断絶を宣言。その後から、宗教法人法に基づく質問権を行使して、解散命令請求の根拠となる「組織性、悪質性、継続性」の証拠を探している。これは全く逆の手順だ。自由民主主義を信奉する政府のすることか、はなはだ疑問だ。
立憲民主主義を掲げる立民はもっと根源的な問題を抱えている。集団的自衛権の憲法解釈を変更して制定した平和安保法制に対し、立憲主義を掲げて反対運動を繰り広げたのが党の出発点だが、憲法解釈の変更にはあれほど強く反発したのに、現行憲法に直接の根拠がなく、解釈変更を繰り返して存続してきた自衛隊に対して、一向に憲法の規定の下に置こうとしない。憲法に明確な規定がない緊急事態対応についても、憲法に根本規定を置くのではなく、事案ごとに法律を制定するという、対症療法的な取り組みしかしていない。
これらは立憲主義とは無関係の、実質的な護憲派の取り組みだ。では、立民が護憲派の民主主義を信奉しているかというと、そうでもない。旧統一教会問題では、党の被害対策本部でも国会でも教団関係者からヒアリングを行わない(発言権を奪う)だけでなく、所属議員が山際大志郎経済再生相に旧統一教会の信者かどうかただしたり、教団信者をマインドコントロールされたものと決め付けたりしても党として何の懲戒もせず、憲法が定める信教の自由への配慮がまったく欠けていることを露呈した。
党として、憲法や安全保障など国政上の核心的な政策について明確な立場を示せない状況では、国民の心をつかむのははなから無理だと言わざるを得ない。