【記者の視点】消費者庁検討会 河野担当相の狙いは何か

政治部長 武田滋樹

「霊感商法は物品の販売でございますが、寄附の問題も指摘されてきている…。…場合によっては、消費者庁の担当の枠を超え、その場合には…政府に対して提言をすることになろうかと思いますが、境界を定めずに御自由に御議論いただきたい」

今年8月28日、河野太郎消費者担当相が消費者庁に設置した「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」の第1回会合での河野氏本人の冒頭発言の一部だ。最初から、悪質商法の枠を超えて消費者問題とはかけ離れた寄付の問題まで扱うと表明した。

検討会の委員は8人だが、座長の河上正二・東大名誉教授(民法)と宮下修一・中央大法科大学院教授(民法・消費者法)は法学者、田浦道子・消費生活相談員と山田昭典・独立行政法人国民生活センター理事長が消費者問題の専門家だが、その他4人は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に批判的な委員で固められた。教団の解散を主張する全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の紀藤正樹弁護士、野党議員として霊感商法問題に取り組んだ菅野志桜里弁護士、日本脱カルト協会代表理事の西田公昭・立正大教授(心理学)、霊感商法についてかつて旧統一教会を名指しする意見書を発表した日本弁護士連合会の副会長(消費者問題対策委員会担当)である芳野直子弁護士の4人だ。

第1回検討会では、各委員が問題意識等を発言したが、トップバッターの菅野弁護士は、旧統一教会を念頭に早々と「特定の宗教法人がこうしたルール違反を繰り返す時には、(宗教法人法に基づく)質問権や報告徴収権や、場合によっては事業停止や解散命令請求と紐付けていくというルートも考えられると思います」と表明。続いてあいさつした紀藤弁護士も、「悪徳商法の会社には会社としての悪徳企業がいますから、そういうものに解散命令ができるかどうかを議論することは、同じように宗教法人の解散命令も消費者問題として議論の余地があるのですね」と、宗教法人の解散命令を消費者問題として議論する方向性を示した。

この二人が方向づけた通り、検討会は、旧統一教会による霊感商法の被害実態の検討はほとんど行わず、献金の契約構造を検討したり、全国弁連の弁護士から旧統一教会の教理解釈(統一原理は社会的に悪である行為も善であるとして実行することのできる人間を作る目的で作られている)にまで踏み込んだ“正体隠し伝道”の説明を受けたりしている。

政教分離について一家言を持つ元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏にインタビューするため、消費者庁の検討会について改めて調べて分かったことだが、政府の検討会としてはあまりにも一方的な議論の内容に驚かされる。

検討会の第1回会合が行われた3日後に岸田文雄首相は自民党総裁として党と旧統一教会との関係断絶を宣言し、検討会が旧統一教会に「解散命令請求も視野に入れ、質問の権限を行使する必要がある」と提言する報告書を出したその日に首相は、教団に対し宗教法人法に基づく調査(質問権の行使)を行うよう文部科学相など担当閣僚に指示した。河野氏と歩調を合わせているのか、引きずられているだけなのか。どうも後者のように見えてしまうのだが。

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