【記者の視点】スポーツ“賭博”の解禁議論

文化になじまず、依存症に懸念

教育部長 太田 和宏

スポーツの試合結果やプレーの内容を賭けの対象にする「スポーツベッティング(賭け)」の解禁に向け経済産業省が検討を続けている。スポーツ産業を活性化して、放映権料、広告収入を拡大し、産業として自立、振興の財源にしたい思惑がある。日本のスポーツの黒歴史には、反社会的組織が絡んだ、八百長事件もあった。インターネットで投票するシステムによって、依存症が広がることも考えられる。賭け事には付き物だ。“お金の問題”だけが先走りしないか注視していきたい。

文部科学省は、今年3月にまとめたスポーツ基本計画で、日本のスポーツ市場(2015年に5・5兆円)を25年に15兆円に拡大する目標を掲げた。計画では、スポーツ“賭博”についても「国内外の状況を調査し、事業化に際する法的整理などを検討する」と言及している。スポーツ庁幹部は「賭博の収益を中学生の部活動に充てることは、全く念頭にない」と語る。同庁では財源として、生徒の負担や企業の寄付などを想定している。経産省とスポーツ庁は有識者による「スポーツ未来開拓会議」を再開しスポーツ賭博について今後、議論を本格化させる。

日本のスポーツは古来の武道から発展してきたものと、明治期に海外からもたらされ、「知育」「徳育」と並び称される「体育」から発展したものと、大まかに言って2系統ある。どちらも教育的観点が色濃く残っており、楽しむ、遊ぶという視点を持った欧米のスポーツとは異なる背景を持っている。スポーツ文化の違いを考慮に入れず、欧米のブックメーカーを参考にして賭博を導入することには慎重を期したい。

自民党のスポーツ立国調査会のスポーツビジネス小委員会ではベッティング解禁の可能性を模索してきた。国内スポーツ市場に資金を循環させ、活性化の起爆剤、競技団体の経営や選手の処遇、引退後の保障などの財源を確保することで選手のパフォーマンス向上につなげたい、としている。

国内のベッティング市場規模は5兆円以上とも言われ、海外のブックメーカーが日本のスポーツを対象にしているケースもある。海外に流出する資金を国内に還流できれば、経済効果は大きい。また、少ない時差で観戦できるアジア諸国からアプローチがあれば、市場規模はさらに大きくなる可能性がある。

スポーツ賭博は競馬、競輪、オートレース、競艇などの公営ギャンブル、スポーツ振興くじなどとは比べものにならないほど、依存症の危険性が高くなるといわれる。若者が活躍するスポーツは同世代の若者の心を魅了するからだ。

「ギャンブル依存症が疑われる成人は国内だけで320万人(渡欧計上)といわれる。国がやるべきことは、新たな賭博の解禁ではなくカジノサイトへの規制強化や依存症の対策を充実させることだ」(ギャンブル依存症問題を考える会)と訴える。“お金”の問題だけでなく、少子化、教員の働き方改革を含め、多角的・多面的に議論を進めてもらいたい。

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