トップ国際北米相次ぐ米最高裁「保守判決」トランプ改革は続いている

相次ぐ米最高裁「保守判決」トランプ改革は続いている

ケンタッキーダービーに出席したトランプ前米大統領=5月7日、ケンタッキー州ルイビル(UPI)

編集委員 早川 俊行
筆者は2019年に、当時のトランプ米大統領が失われつつある建国の理念や伝統的価値観を取り戻すために左翼勢力と戦っていることを拙書『トランプ「超・保守改革」―神と自由を取り戻す』(小社刊)でリポートした。翌年の大統領選でトランプ氏が敗れ、バイデン大統領が誕生したことで、その取り組みは潰(つい)えたかのように思われた。

だが、トランプ氏が政権を退いてから約1年半が経(た)った今も、実は「トランプ保守改革」は続いている。それは司法を通じてだ。

連邦最高裁は最近、国論を二分する重要な社会問題で、保守派に勝利をもたらす判決を次々に下している。9人で構成される最高裁にトランプ氏が保守派判事を3人送り込んだことで保守派の優位が強化され、こうした判決が生まれたのだ。

オバマ前大統領もブッシュ(子)元大統領も、2期8年で指名した最高裁判事は2人ずつ。トランプ氏が1期4年で3人も指名できたのは異例のことである。

最近の最高裁判決で大きな注目を集めたのが、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆したことだ。保守派活動家たちは、胎児の生命を守るために「プロライフ(生命尊重)運動」と呼ばれる地道な草の根運動を展開してきた。今回の判決は、半世紀にわたる保守派の悲願が成就した瞬間と言っていい。

最高裁はまた、西部ワシントン州の高校アメフットコーチが試合後にグラウンド中央で片膝をついて祈りを捧(ささ)げていたことを理由に解雇されたことをめぐる裁判で、コーチの信仰の自由を擁護する判決を下した。左翼勢力は政教分離の原則を錦の御旗(みはた)にして圧力をかけ、米社会から宗教的要素を削り取ってきたが、最高裁はこうした潮流に一定の歯止めをかけた形だ。

さらに、北東部メーン州が宗教系の私立学校を学費補助の対象外にしたことに対し、最高裁は違憲判断を下した。これも信仰の自由を擁護する重要判決だ。

ワシントン・ポスト紙はこれらの判決について、「多くの点で革命的だ」とする専門家の声を伝えたが、その通りだろう。最高裁が過去の判例を覆すのは簡単なことではない。だが、今の最高裁は50年近く維持されてきたロー対ウェイド判決を「最初からひどく間違っていた」とばっさり切り捨てた。誤りがあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく正そうとする姿勢が鮮明である。

中絶判決でもう一つ注目すべきは、同性婚を全米で合法化した2015年最高裁判決の破棄に道を開いたことだ。憲法に言及のない中絶を憲法上の権利と認めることはできないとした最高裁の論理に基づけば、同性婚も憲法上の権利とは認められないと判断される可能性がある。

バイデン大統領の下で、引退したリベラル派判事の代わりに別のリベラル派判事が就任したが、トランプ氏が確固たるものにした最高裁の保守派優位の構図は当面続く。「トランプ保守改革」は今後も米社会に大きな影響をもたらすことになる。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »