有権者の6割「考慮」
沖縄県知事選(9月13日投開票)は保守系の古謝玄太氏が圧勝し、現職の玉城デニー氏は「地滑り的大敗」(琉球新報)を喫した。投票に少なからず影響を与えたのは今年3月に同県名護市辺野古沖で同志社国際高2年、武石知華さん(当時17歳)が死亡した抗議船転覆事故だ。
NHKの出口調査では、転覆事故を投票の際に考慮したかとの問いに、24%の人が「大いに考慮した」と回答。「ある程度考慮した」の37%と合わせると6割超の人が考慮していた(産経19日付沖縄考「負けに不思議の負けなし」那覇支局長・大竹直樹氏)。朝日の連携紙・沖縄タイムスによれば、各地の投票所で事故が「投票に影響した」と答えた人が50人中18人(36%)おり、その多くが古謝氏に投票したとしている(16日付)。

読売は「(玉城陣営に事故も)打撃となった。辺野古移設に反対し、玉城氏を支援する団体が使っていた船だったことで強い批判を招いた」(15日付社説)とし、毎日は「(転覆事故は)玉城氏をさらに厳しい立場に追い込んだ。知事の責任を問う声は選挙戦にも影響した」と記事に書く(15日付)。誰が見ても転覆事故は玉城氏大敗の一因だ。
「苦渋」にすり替える
朝日は15日付社会面の選挙戦総括記事に「(転覆死亡事故では)玉城氏にも批判が殺到していた」とするが、同社説「苦渋の民意が示す重み」は事故に触れず、有権者が未来に希望を託した一票を「苦渋」にすり替えている。社説は「辺野古移設に反対の県民はなお多い」「玉城氏も4割近い27万票余りを得た」などと負け惜しみを書き連ね、挙げ句に「(古謝氏は)多様な県民の声に耳を傾け、国に是正を求めることだ」と「多様」をもって圧勝の民意を消し去ろうと躍起だ。
毎日の解説と社説も時代錯誤の極みだ。15日付の「反対派大敗 時代の転換点」と題する解説(比嘉洋氏)と同社説「複雑な民意向き合わねば」は1995年の米兵による少女暴行事件を書いても抗議船転覆事故については沈黙し、社説は「(辺野古工事への)無力感やジレンマを抱えながら投票した人も少なくなかっただろう」と、有権者の投票行動を「無力感やジレンマ」と勝手に解釈し、古謝氏圧勝に水を掛けている。
それにしても「苦汁」(朝日)とか「複雑」(毎日)とか、呆(あき)れた物言いだ。有権者がそんな気持ちなら棄権する人が多かろう。だが実際は、投票率は約61・6%(前回より約3・6ポイント増)に上り、テレビで報じられた投票風景に暗さはなかった。だから古謝氏は史上初の40万票超えを果たした。朝毎の「民意ねじ曲げ」は歪曲(わいきょく)、改竄(かいざん)の類いと言うほかない。
辺野古事故から半年を迎えた16日、産経は「転覆事故 遠い解明」、毎日は「知華の死 もう半年 辺野古転覆遺族『最期 話せていれば』」との追悼記事を載せた。同日、転覆船を運航した「ヘリ基地反対協議会」共同代表2氏らが現場海域近くの砂浜で献花したが、これを沖縄タイムス、琉球新報の地元2紙をはじめ各紙(朝日を除く)が写真付きで一斉に報じた(17日付)。産経は「『偏向』見直し複数校」と文部科学省の全国調査結果をスクープし、琉球新報は20日付に「辺野古転覆事故から半年 原因と責任 曖昧にできぬ」との社説を掲げた。
欺瞞性が浮き彫りに
ところが、朝日は完全スルーだ。この半年間で唯一、転覆事故を取り上げた(と言っても主題は文科省批判)5月27日付社説「辺野古巡る学習 違法認定に大きな疑問」で「ずさんな安全管理で17歳の尊い命が奪われた。痛ましく憤りを禁じ得ない」と書いたが、そんな思いの欠片でもあるなら沈黙できるはずがない。改めて朝日の欺瞞(ぎまん)性が浮き彫りにされた。
「報道しない自由」を言うなら、もはやメディアの存在価値なしだ。玉城氏はきょう(29日)任期満了で県庁から去る。朝日も沖縄報道から去るべし、だ。
(増 記代司)







