皇族に「遺伝的要因」
東大大学院教授の本田由紀氏と言えば、ジェンダーフリーの旗振り役を担い、自民党の「保守政策」を目の敵にしてきた名うての左翼学者だ。朝日デジタル版のコメンテーターも務め、7月27日付の「広がるヘイトの苗床『危うい社会に生きている』 弁護士が抱く危機感」と題するインタビュー記事に、こんなコメントを書いていた。
「ヘイトは票にもなる。ろくな政策を実施できてない政治家が憎悪の対象を自身から他の誰かにそらすためにヘイトや差別を振りまき、それに一部の有権者が吸い寄せられる。……金や票を媒体としてヘイトという悪性の中毒が、SNSという毛細血管を通って社会の全身を侵していく」
この言はそっくり本田氏にお返ししなければなるまい。9月1日に自身のX(旧ツイッター)で、皇族費が倍増するとの東京新聞の記事や三笠宮彬子女王殿下を含む二方の女性皇族の御写真を添えたXの投稿を引用し「この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる」と、遺伝的要因を持ち出して自らがヘイトと差別を振りまく張本人と化しているからだ。
人種差別撤廃条約は、特定の家系や出生、遺伝的要因を理由に排除や恐怖を煽(あお)る表現は、差別的取り扱いを助長するとして禁止または懸念の対象としている。本田氏のX投稿はまさにこれに該当する。X上に批判が溢(あふ)れたのは当然のことだろう。
非難に「驚いている」
これを朝日は5日付社会面に1段見出しで「東大教授投稿に『差別的』と批判 教育学会、対応を検討」と報じ、「本田氏が会長を務めている日本教育学会は『倫理委員会で対応を検討中』としている」「本田氏は朝日新聞の取材に、学会を通じ『取材はお断りしております』とした」とし、記事末尾にこんな〝断り書き〟を載せた。
「本田氏は朝日新聞デジタル版『コメントプラス』のコメンテーターを務めています。本社は人権尊重を基本原則とする人権方針を定めており、この方針への理解と実践をコメンテーターにも求めてまいります」
朝日が日本教育学会にも取材しました、本田氏本人にも取材を申し入れましたと〝取材ぶり〟を示し、その上で社の人権方針をわざわざ書くのは、累が朝日に及ばないようにする思惑からに違いない。コメンテーターにも求めていくとするのは本田氏のX投稿を差別発言と認めた証左だ。
ところが、本田氏が5日夜、自身のXで「投稿に関する解説」とする書面を公表すると、朝日は6日付に「投稿への批判 『曲解』と説明 東大教授、SNSで」と本田氏の〝開き直り〟をそのまま記事に書き連ねた。まるで打ち合わせたかのような素早さだ。
それによると、本田氏は「遺伝的要因のおそろしさ」という言葉について、皇室と縁戚関係がある政治家を念頭に「自らと遺伝子を共有する血縁者を優遇しようとする行為の問題点を指している」と説明。「遺伝的要因」との表現が最適だったかは「検討の余地がある」としつつ、差別には当たらない、と主張した。日常的に「遺伝」という言葉は使われており「これほどに非難されていることに驚いている」としている。
人権感覚を疑わせる
呆(あき)れた人権感覚にこちらの方が驚いてしまう。「皇室と縁戚関係がある政治家」ならヘイトや差別は許されるとでも言うのか。本田氏の「遺伝」への執着ぶりは遺伝的理由でユダヤ人を大虐殺したナチス・ドイツのヒトラーと重なるといったX投稿も散見されるが、それもむべなるかな、だ。それ以降、朝日は報じていない。本田氏の〝開き直り〟の垂れ流しで幕にする魂胆なら朝日の人権感覚も大いに疑わせる。
この問題で社説を掲げたのは産経1紙のみ(9日付「東大教授の投稿 皇族への差別看過できぬ」)。他紙は報道記事でも論説でも沈黙を続けている。オールドメディアの人権感覚もはなはだ怪しいと言うほかない。
(増 記代司)







