トップオピニオンメディアウォッチ【新聞】30年ぶりの長期金利3%で「警鐘」と高市財政運営に修正求める各紙

【新聞】30年ぶりの長期金利3%で「警鐘」と高市財政運営に修正求める各紙

利上げ観測が契機に

 2日付日経「政府と日銀は長期金利3%の警鐘生かせ」、3日付読売「金融市場の警鐘を直視せよ」、朝日「規律欠く財政は限界だ」、4日付産経「信認得られる政策運営を」――。

日本銀行
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 長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りが、1日の債券市場で3%を超え、30年ぶりの高水準となったのを受け、社説で論評を掲載した各紙の見出しである。

 列挙した見出しの通り、各紙の注文は高市早苗政権の「責任ある積極財政」へのもので、市場の信認を得られるよう財政規律を重視せよの一言に尽きる。毎日も2日付社説「140兆円超の予算要求」の中で、「巨額の借金を顧みず、財政を急膨張させる。野放図な政策……」と記し、「政府は警鐘に耳を傾けるべきだ」と説く。

 1日に長期金利が3%を超えた直接の要因は、日経が指摘するように、日銀の利上げ観測の高まりである。米国でも長期金利が上昇しており、連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げに踏み切るとの観測がある。また、片山さつき財務相が8月末に20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議のために米国を訪れ、ベセント財務長官と会談した際、「同氏は7月末の日米協調による円買い介入に際して日銀の利上げ加速を求めたとされ、改めて思惑が強まった面もあ」(同紙)る。

 長期金利が上昇する大きな要因には、中東情勢の緊張緩和が見通せない中、原油価格の高止まりによるインフレ高進への懸念があり、日経が指摘する供給制約の問題もある。

 要するに、高市政権の財政運営だけが長期金利上昇の理由ではない。にもかかわらず、特に朝日、読売はいかにも同政権の財政運営がその元凶であるかのような書きぶりである。

従来と異なる考え方

 もっとも、金融市場も新聞と同様に同政権の「責任ある積極財政」が財政規律を欠いているとみて、財政に不安を感じているようである。

 高市政権は「強く豊かな日本」を実現するために、財政単年度主義の弊害を避け、財政規律については政府債務残高を対GDP(国内総生産)比で安定的に減らしていくことを目指している。これまでの政権とは、財政運営の考え方が大きく異なっていることを強く認識すべきであろう。

 2027年度予算では概算要求が総額143兆円超となり、4年連続で過去最大になった。これは、新設した要求上限のない「強く豊かな日本」投資枠が12兆円超となったほか、財政改革により、これまで補正予算に頼ってきた恒常的な施策を当初予算へ一本化したということもある。

 現在は財政改革の途上であり、今後、補正なしの本予算のみでの編成が定着していけば、予算規模の増加幅もそれなりに抑制されることになるのではないか。

 片山財務相は4日の会見で、予算案策定に向けた各省庁の要求内容の本格的な査定について、「それぞれの施策の費用対効果を重視し、無駄をそぎ落とした筋肉質な予算としていきたい」と述べ、強い経済と財政の持続可能性を一体的に実現する考えを示す。供給制約の解決にもつながる投資枠には、「成長への寄与、民間投資の誘発効果などを精査する」と述べる。

上昇にはメリットも

 各紙は長期金利3%台への上昇を「警鐘」と捉え、悪い側面だけを強調する。確かに長期金利の上昇は中小企業の資金繰りを厳しくし、住宅ローン金利を引き上げて家計の負担を重くし、国にとっては国債の利払い費の増加をもたらす。

 しかし、金利の上昇には利子所得の増加や、場合によって円高も期待できるなどのメリットがある。日本の金融資産は家計部門だけでも約2386兆円(26年3月末時点、日銀資金循環統計)。そのうち現金・預金は約50%だから、利子所得も相当巨額である。日本経済全体で見れば、プラスの影響が大きいのだ。各紙には冷静でトータルな思考が欠けている。

(床井明男)

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