トップオピニオンメディアウォッチ【海外】アフリカの重要鉱物囲い込みに向け中国の影響力拡大伝えるWSJ

【海外】アフリカの重要鉱物囲い込みに向け中国の影響力拡大伝えるWSJ

EVやAIに不可欠

 電気自動車(EV)や人工知能(AI)、再生可能エネルギー、先端兵器に欠かせない「重要鉱物」を巡り、アフリカが米中の争奪戦の舞台になっている。中でも中国は、鉱山を買収するだけでなく、鉱物を加工・精錬する能力まで押さえることで、世界の供給網に対する影響力を強めている。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2025年7月、アフリカ54カ国のほぼ半数が過去2年間に鉱石など未加工資源の輸出を制限・禁止したと報じた。背景には、豊富な資源を掘り出して海外に輸出するだけでは、雇用や税収、産業育成につながらないというアフリカ諸国の不満がある。特にコンゴ(旧ザイール)とザンビアにまたがる「銅ベルト」には、世界のコバルト資源の約半分が存在するという。

採石場のイメージ
採石場のイメージ

資源加工の能力不足

 だが問題は、資源を持っていても、それを最終製品に近い形まで加工する能力が乏しいことだ。米経済メディア「セマフォー」は今年7月、世界の主要エネルギー鉱物の加工能力の約72%を中国が握っていると指摘した。採掘地の分散が進んでも、精錬段階では中国への依存が続いているということだ。

 これは単なる貿易上の優位ではない。中国が鉱石の採掘から精錬、電池材料の製造までを一貫して担えば、アフリカ産資源の価格や流通を左右する力を持つことになる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は1月、コンゴの鉱物資源を巡る米中競争について、中国企業は豊富な資金力を背景に、米欧企業より長期的な視点で投資し、場合によっては赤字でも事業を続けられると報じた。

 実際、中国企業によるアフリカ資源への投資は広範囲に及ぶ。米経済メディア「ビジネス・インサイダー・アフリカ」は7月、アフリカには世界の重要鉱物埋蔵量の約30%があるとし、コンゴ、ザンビア、ギニア、ジンバブエなどで中国企業が鉱山開発を進めていると報じた。コバルトだけを見ても、コンゴは世界の鉱山生産の約70%を占める。

 その象徴とも言えるのが、タンザニアのレアアース(希土類)鉱山だ。WSJは昨年、中国企業の出資によってオーストラリア企業が開発していた鉱山が最終的に中国側の支配下に入った経緯を報じた。西側諸国は中国への依存を減らすため代替供給源を確保しようとしたものの、資金力と長期的な投資姿勢で中国側に競り負けた。

 問題は、こうした資源支配がアフリカの住民にどれほど利益をもたらしているのかという点だ。WSJは今年3月、中国企業の洛陽モリブデン(CMOC)が操業するコンゴのコバルト加工施設について、硫黄酸化物とみられる有害物質によって周辺住民や労働者に健康被害が出ているとの調査結果を報じた。中国企業は因果関係を否定しているものの、病院では呼吸器症状の増加が確認され、環境基準を大幅に上回る排出があったとの指摘も出ている。

輸出禁止に乗り出す

 一方、アフリカ側も黙って資源を差し出しているわけではない。コンゴは今年、銅・コバルト精鉱の輸出を禁止し、国内での加工を促す政策に乗り出した。ザンビアのヒチレマ大統領もFTに対し、米中どちらか一方を選ぶのではなく、双方と取引し、自国に利益をもたらす投資を選ぶとの立場を示している。

 アフリカは米中対立の単なる「資源供給地」から脱しようとしている。だが、精錬設備や電力、輸送網、資金調達などを中国に依存したままでは、鉱山の所有権を自国企業に移したとしても、実際の価値創出を海外に握られる構図は変わらない。

 中国のアフリカ資源戦略の巧みさは、鉱石そのものを確保するだけでなく、鉱石を「価値」に変える工程まで押さえたところにある。EV、AI、蓄電池、軍事技術が重要鉱物への依存を強める中、アフリカ諸国が真に資源大国として台頭できるか、それとも中国を中心とする巨大な供給網の「採掘現場」にとどまるのか。資源競争は一段と激しくなりそうだ。

(本田隆文)

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