トップオピニオンメディアウォッチ【経済誌】金利上昇の要因や金融機関の抱えるリスクについて企画を組む各誌

【経済誌】金利上昇の要因や金融機関の抱えるリスクについて企画を組む各誌

6月に政策金利1%

 1990年代初めに起こったバブル経済の崩壊によってわが国は長期にわたる景気低迷時代に突入。〝失われた30年〟と呼ばれたデフレ下で産業の空洞化、超氷河期ともいうべき不安定な雇用状況が続いた。2012年12月、第2次安倍晋三内閣(当時)が発足し、日銀は異次元の金融緩和を行うなど景気浮揚策を打ち出すが、すぐさまデフレ脱却とはならなかった。そうした中、日銀は今年6月、政策金利を0・75%から1%に引き上げた。政策金利が1%となるのは実に31年ぶりのこと。賃金上昇、物価上昇が話題となる昨今、今後も金利上昇が続くのか、関心の集まるところである。

 こうした現状を踏まえ、経済誌は金利の動向や金融業界の実情について企画を組んだ。週刊東洋経済(8月1日・8日合併号)は「銀行動乱~熱狂の裏でくすぶる5つの火種」。週刊ダイヤモンド(8月1日号)は「金利1%の世界」。そして週刊エコノミスト(7月7日号)は「突入!金利1%時代」と見出しを立てて論評している。

銀行業界は高収益に

 ところで今回話題となっている政策金利とは、日銀が金融機関(一般の銀行)同士の短期資金の貸し借りについて示す金利のことである。この間の金利と経済の動向を見ると、13年4月に異次元緩和が決定されたものの景気は浮揚せず、2年9カ月後の16年1月にはマイナス金利政策を導入した。政策金利がプラスに転じたのは24年3月のこと。低金利時代から金利上昇時代へ舵(かじ)を切らせた要因についてダイヤモンドは、「ウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇などにより、日本でも2%を超えるインフレが継続。加えて先んじて急ピッチで利上げを米国が進めたことで日米金利差が拡大し、日銀の低金利維持による円安が、物価上昇を加速させる側面もあった」と指摘する。確かにロシア・ウクライナ戦争によって世界的に穀物価格が上昇し、輸入コストプッシュインフレの長期化が金利上昇の圧力になっていた。さらに、中東情勢における米国・イラン戦争でのホルムズ海峡封鎖といった地政学的な要因も見逃せない。

 こうした金利上昇時代に入ったことを歓迎しているのが銀行業界。金利上昇による融資の金利収入増によって、25年度決算で全国銀行107行のうち、59行が過去最高益を記録したという。ただ、東洋経済は高収益に沸く銀行にも火種がくすぶっていると指摘する。その火種として①消費者の個人向け国債へのシフト②不動産融資急膨張のリスク③視界不良のアジア市場④人工知能(AI)が絡んだサイバー攻撃⑤金利上昇時代を迎えた日銀の方向転換――といった銀行を取り巻く五つの動向を挙げる。この中でとりわけ銀行業界が頭を悩ませているのがAIミュトスの登場によって引き起こされかねないセキュリティー問題だ。「セキュリティー対策にかかる巨額負担が経営基盤の弱い地銀の再編を促すのではないか」(同誌)と危惧する声もある。

どこまで続くか予測

 問題は、どこまで金利上昇が続くのか、ということ。ダイヤモンドは「特殊要因を除いた基調的な物価上昇率が2%台で推移していることを踏まえると、今後は追加利上げが必要になる。市場では、政策金利の到達点を1・5%程度とする向きが中心」と予測。エコノミストは数値こそ出していないものの、「日本は世界の金利上昇との連動性が高まる一方で、財政政策への警戒感という国内要因も金利を押し上げている」と説く。

 金利上昇は、預貯金を保有する人にとっては利息収入が増えるというプラスの側面があるが、住宅ローンを抱える人にとっては負担増につながる。経済はよく「生き物」に譬(たと)えられるが、内外の環境に左右される。とりわけ日本のように資源の乏しい国にあっては外国の動向で大きく変わる。超低金利時代から金利上昇時代への転換。個人も企業も政府も新しい対応が求められている。

(湯朝 肇)

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