「逃げ遅れる」恐れ大
熊本地震から1カ月。酷暑の中、生活を取り戻そうと熊本の人たちの努力が続いている。そんな時に、今度は千葉で集中豪雨があり、多くの人々が被災した。日本は災害が途切れることがない。

週刊誌は地震に関連して「全国『Sランク活断層』危険度マップ」(週刊現代8月31日号)などと警戒を呼び掛けている。だが、引っ越しでもしない限り逃れる術(すべ)はない。地震多発地帯の日本に住む以上、地震とどう向き合い「命を守るか」こそが重要であり、読者が知りたいことだ。
これに応えているのがアエラ(8月24日号)の巻頭特集「地震列島で命を守る」である。南海トラフ地震では「約10㍍」の津波が押し寄せるまでに「34分」(神奈川県鎌倉市想定)かかる。意外に時間があると思うかもしれない。
ところが「平田直・東京大学名誉教授」によると「地震発生後すぐに避難する人は2割程度」にすぎない。多くの人は「逃げ遅れる」可能性が高いのだ。内閣府の南海トラフ地震の被害想定では「想定死者は最大約29万8000人。うち約21万5000人、7割以上を占めるのが、津波による犠牲者」と試算されている。
平田氏は「全員が5分以内に避難すれば、死者はその1割程度まで減らせます」と指摘し、「すぐに逃げられるよう、どう動くか頭の中で確認しておいてほしい」と強調する。とにかく、地震が発生したら、即、避難する。普段からシミュレーションしておくことが重要だということだ。
被災地離れる選択も
記事は「首都直下地震」についても述べている。これは「東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県の一部)およびその周辺の地殻で起きる大規模な地震」を指す。住宅やビルなど建物の耐震化率を上げることは、被災者の生存率を上げることである。目を背けてならないのは、都市機能を長期にわたって失うことは避けられず、そこでは生活ができないということだ。
「防災アドバイザーの高荷智也さん」は「仕事や公的な役割で残る必要がある人を除けば、現地に無理に留まらず、一時的に被災地を離れる選択肢を持ってほしい」と指摘する。出身地や縁故者を頼っていく疎開地があれば、一時的に避難しておくことも必要だということである。
このことについて「目黒公郎・東京大学教授」は「現代では、血縁ネットワークに頼らない疎開システムをどう作るかということだと思います」と提案している。確かに「田舎」を持たない東京人も数多くいるだろう。だから、東京が被災した場合の人員受け入れ=疎開システムの構築はかなり現実的な対策だ。
とはいえ、同誌は普段から「二拠点生活や疎開を現実的と受け止める生活者はどれだけいるだろう」と心配する。二拠点とはつまり「別荘」を持つということだ。経済的余裕が必要で、誰もが可能な話ではない。
自治体連携で対策を
現実的なのは、首都圏被災後の受け入れシステムをつくっておくということだろう。多数の被災者を一時的にであれ受け入れられる大規模な体制は、一自治体で構築できるわけではない。災害が及ばないと想定される地方の自治体と提携して災害対応策をつくることが必要となる。
「副首都」創設法はそういうことだ。これは「東京の中枢機能が立ち行かなくなった場合、道府県からの申し出をもとに首相が代替となる『副首都』を指定する仕組み」である。一方、被災者の疎開は災害が起きてからの「申し出」では間に合わない。あらかじめ協定を結んでおき、普段は別の用途で使うにしても、受け入れ態勢と設備を確保しておくべきだろう。
未曽有の大災害に遭って、命を守り生き延びる準備をどうするかについて、私事だが想定したことがある。北関東の実家に交通機関を使わずにたどり着くには、まず荒川をどこでどう越えるか、などとシミュレーションしてみたが、取りあえず運動靴を机の下に忍ばせておくことしかしなかった。アエラの記事は「生き延びる」にはどうしたらいいかを改めて考えさせる。
(岩崎 哲)







