トップオピニオンメディアウォッチ【新聞】タブーなき核議論を提言した小泉防衛相に教条的な鞭を振るう朝毎

【新聞】タブーなき核議論を提言した小泉防衛相に教条的な鞭を振るう朝毎

ロシアの脅しに対抗

 フランスは3月、核弾頭を増やし、欧州に核の傘を提供する考えを示した。フィンランドは6月、有事の際の自国への核兵器持ち込みを可能にした。

 フィンランドが23年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟したのも、これまで核兵器の持ち込みや輸送、所持を全面的に禁じていたのを撤廃したのも、ウクライナを侵攻したロシアが、欧米のウクライナ支援を牽制(けんせい)するため核のブラフ(脅し)を行ったことなどによる。

 政治家は理想を語る宣教師ではなく、現実問題を処理する義務がある。その意味ではフランスもフィンランドもまっとうな政治的判断を下したと評価される。

 ところがロシアだけでなく、600発もの核弾頭を持ち2030年までに1000発以上保有する意向とされる中国や核開発に余念がない北朝鮮を隣国に持ち、核の脅威のるつぼの中にあるはずのわが国の安全保障感覚はマヒしたままだ。

毎日は「軽率」と断罪

 それでも一部、声を上げる政治家が出てきた。

 「日本にとっては議論するのが難しい課題だが、触れざるを得ない一つは核だ」

 小泉進次郎防衛相は7月17日配信のインターネット番組「言論テレビ」で、核兵器に関しタブーなき検討の必要性を訴えた。

記者会見する小泉進次郎防衛相=4日、国会内(時事)
記者会見する小泉進次郎防衛相=4日、国会内(時事)

 中国は直ちに反発。外務省スポークスマンは7月21日、「現職の防衛当局の責任者がこのような発言を行うことは日本の戦後史上、極めて異例で挑発的だ」と批判した上で「日本の新型軍国主義」を警戒すべきだと主張した。

 追い打ちをかけたのが、毎日・朝日の非難社説だった。

 毎日は8月7日付社説で「『核なき世界』を目指す理念を軽んじていないか」と疑問を提起した上で、「日本が核保有を目指すのではないかとの疑念を国際社会に与えかねない。自衛隊を統制する防衛相として軽率のそしりを免れない」と一方的に断罪した。

 だが、同社説には「大国による核軍拡の動きが強まる中、安全保障政策の検証は必要だろう」と書いてある。守るべきは国家の安全と平和であって、「核なき世界」という教条主義的な空理空論ではないはずだ。それでも毎日は続けて「核への依存を強めたからといって、日本の安全が担保されるわけではない。かえって周辺国の警戒を招き、地域の緊張を高める恐れがある」と書く。政治は現実を直視し、リスクヘッジの手だてを講じなければ付け入れられるだけだ。武器を持つ隣人の悪意を封印するには、相応の武器を準備する必要がある。それを隣人の意を害し、警戒心を高めることで地域の安全が脅かされるというのは論理が逆転している。

安保環境顧みぬ朝日

 朝日社説(7月29日付)も毎日同様、「熟考された提起には見えず、看過することはできない」とバッサリ切ってのける。返す刃で「いま求められるのは、核への依存を深める方向ではなく、核兵器を二度と使わせないという国際規範の再構築である」と主張する。

 だが中露と北朝鮮に隣接する日本の深刻な安全保障環境を顧みることなく、熟考していないのは朝日自身の方だろう。

 武力による現状変更の道を突き進み、核を威嚇に使うような国があるのに、「国際規範の再構築」などと一気に飛躍するのはあまりに短絡的過ぎる。その精神構造は「核なき世界」と同様、お花畑のファンタジーのようなものだ。

 今、政権に問われているのは、国家の安全を根底から覆しかねない安全保障上の課題を先送りせず、世論が二分することを恐れず、日本が再び核の攻撃にさらされることがないよう必要な手だてを講じることだ。まず望まれるのは、タブーなき議論だろう。そのためにも小泉氏を「荒野に呼ばわる孤独な預言者」にしてはならない。

(池永達夫)

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