トップオピニオンメディアウォッチ【新聞】左翼活動家や労組幹部を扱う朝毎の「8月ジャーナリズム」に違和感

【新聞】左翼活動家や労組幹部を扱う朝毎の「8月ジャーナリズム」に違和感

武器輸出に驚きの声

 「もはや戦後ではない」――。こう宣言した1956年の「経済白書」から70年。今年の各紙を見ると、ようやく「戦後」を越えた感がする。昨年は戦後80年とあって年初から力の入ったキャンペーンを張ったが(出尽くしたか)、今年はさほど見当たらない。「過去から未来へ」(高市早苗首相)が時代の趨勢(すうせい)だろう。

憲法改正反対や戦争反対を訴え国会正門前で行われたデモ。主催者発表によると約1万人が参加したという。参加者はペンライトやプラカードを掲げて「憲法を守れ」などの声を上げた=東京・永田町(時事)
憲法改正反対や戦争反対を訴え国会正門前で行われたデモ。主催者発表によると約1万人が参加したという。参加者はペンライトやプラカードを掲げて「憲法を守れ」などの声を上げた=東京・永田町(時事)

 そんな中、何とも違和感を覚えた企画記事がある。一つは朝日の「戦後81年 ただよう空気」(3回連載)だ。上(14日付)は「武器輸出解禁 知らなかった 戦争知らぬ世代 変わる視線」との見出しで「都内の写真館で働く女性(36)」を匿名で登場させ、こう書く。

 「イラン攻撃を巡り、高市早苗政権は一時、自衛隊のホルムズ海峡派遣も検討した。『そんなことになってたんですか。知りませんでした』。女性は驚いた様子を見せた」

 どうやら記者はおどろおどろしく自衛隊が米軍の軍事行動に加担するとでも話したようだ。そうでなければ「そんなことになってたんですか」と驚くはずがない。

禁じ手の誘導質問か

 記事には「4月には、政府が殺傷能力のある武器の輸出の全面解禁を決めた。これも、女性の耳には入っていなかったという。『人を殺すことに加担するかもしれないってことですよね? それは嫌ですね』」ともある。これが見出しになっているのだが、女性の知らない武器輸出について記者が「殺傷能力」を強調したとしか考えられない。仮に「同盟国・同志国の抑止力・対処力を強化するための武器輸出」と言えば「平和を守るためなんですね」と答えたかもしれない。朝日は禁じ手の誘導質問で記事を綴(つづ)っているのだ。そうまでしなければ「ただよう空気」が書けないとは、朝日記者も落ちたものだ。

 中(15日付)は「冷笑 傍観 それでも街頭へ」との見出しで「国会議事堂前で、ほぼ毎月開かれている市民団体『WE WANT OUR FUTURE』主催の反戦デモ」に参加している52歳女性と「都内に本部を置く生協の労働組合幹部」の60歳男性(いずれも実名)を登場させ、1回目とは一転して饒舌(じょうぜつ)に語らせている。市民団体は共産党機関紙「しんぶん赤旗」にしばしば登場する反戦団体。生協の労組と言えば、生協労連と思われるが、これまた共産系として名高い。言ってみれば、そのヨイショ記事だ。

 下(16日付)は「あの道進ませぬ まだなお語る」との見出しで、101歳の元日本軍兵士の聞き書きを載せている。元兵士は「8月ジャーナリズム」で知られた人物で昨年はほぼ全紙に登場していた。記事には新味はなく、その繰り返しだ。朝日の取材力も落ちたものだ。

毎日は防衛産業批判

 もう一つ、違和感を抱かせたのは毎日の「揺らぐ平和 軍拡の時代に」と題するシリーズ。第1回(15日付)は「被爆地 防衛を成長戦略 『軍艦』輸出加速を造船所OB懸念」との見出しで、「(三菱重工の)長崎造船所の社員だった吉田豊さん(84)」を登場させ、防衛産業への疑問を語らせている。だが、同社の社員やOBの多くは「なぜ、この人」と思ったに違いない。

 吉田氏とは何者か。地元紙の長崎新聞にはこうある。「1957年に三菱重工業長崎造船所に就職。労働組合活動にも力を入れた。原子力船『むつ』の佐世保入港に抗議するため始まった『反核9の日座り込み』にも、1979年3月の第1回から参加。座り込みは今年6月に500回を迎えたが、もう生活の一部になっている」(2024年9月12日付)。OBといっても半世紀ほど前に退社した元左翼労組員で、その後、旧社会党の専従職員だったバリバリの活動家なのだ。同労組は今では社内から一掃されている。こんな人物の話をもって毎日は防衛産業批判を書き連ねるのだ。2回目以降も知れたものだ。

 朝日は改正皇室典範を「時代錯誤」と批判していたが、朝毎の終戦企画記事にこそ、このレッテルが相応(ふさわ)しい。

(増 記代司)

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