トップオピニオンメディアウォッチ【新聞】消費減税に「未来への責任放棄」と厳しい批判の各紙に足りない視点

【新聞】消費減税に「未来への責任放棄」と厳しい批判の各紙に足りない視点

本紙は「消費を刺激」

 7月31日付の読売「懸念は払拭されないままだ」、朝日「社会保障の安定損なう無責任」、日経「消費税減税は未来への責任放棄だ」、毎日「将来に禍根を残す浅慮だ」、産経「減税判断の妥当性どこに/財源確保の具体策が必要だ」、8月5日付本紙「消費のギアチェンジ見たい」――。

 高市早苗首相が先月30日に、現在8%の食料品の消費税率を来年4月から2年間限定で1%に引き下げる方針を正式に表明したことを受け、各紙が掲載した社説見出しだ。

 列挙した通り、本紙以外は軒並み手厳しい批判の言葉が並ぶ。中でも、読売を除く朝日、日経、毎日、産経の4紙は通常2本立ての枠に1本立ての大社説で首相の消費税減税の方針を厳しく批判。何かと首相批判を展開する左派紙はともかく、保守系紙でも同様かそれ以上の厳しい論調となった。

 最も厳しいのは経済紙の日経。見出しでもそうだが、本文冒頭から次の通りだ。

 「高市早苗政権はこんなにも大局観を欠いた国家運営しかできないのか。財政規律を軽視した消費税減税は社会保障制度の財源に穴をあけ、国債への依存を強めかねない。目先の支持率のために将来の国民生活を脅かす愚策が断行されるなら、あまりにも無責任だ」

減税額は年約5兆円

 本紙を除く5紙が問題視するのは、日経の指摘の通り、社会保障制度の財源になっている消費税について、選挙公約だった減税を行うことである。

 日経は言う。「医療、介護、年金などの社会保障給付は、2026年度予算ベースで144兆円に上る。財源は保険料で約6割、国と自治体からの公費投入で約4割を賄っている」

 「今でも約26兆円の消費税収では公費投入分の全額を賄いきれず、国債発行で補っている状態だ。そのうえ安定財源である消費税を減税で縮小してしまえば、公費部分に大きな穴があいてしまう」

 さらに、1989年の導入から約30年かけて税率を10%(軽減税率は8%)まで引き上げてきたとして「歴代政権が積み上げてきた消費税を初めて切り崩す重大性や責任の重さを、どう考えているのか」という具合だ。

 確かにその通りだが、財源がないわけではない。首相が語るように、租税特別措置・補助金の見直し、外国為替資金特別会計の剰余金などの税外収入の活用があり、首相は税収動向を見極めつつ、そうした取り組みをゼロベースで行うなど、歳入・歳出両面の見直しを進めるという。

 食料品の消費税減税で年約5兆円の財源が失われるが、「税外収入だけでも2025年度見込みで約8・7兆円」(本紙)あり、しかも減税は2年限定だ。「未来の国民生活を脅かす、政治の責任放棄にほかならない」(日経)とは言い過ぎであろう。

財政規律維持に偏重

 選挙公約だった食料品の消費税減税は、長引く物価高が足かせとなって低迷が続く消費を、家計負担の軽減を通じて活性化するための措置だ。

 防衛分野や危機管理・成長投資と同様、高市政権が目指す「強い経済」実現の一助となるものであり、本紙が「消費のギアチェンジを見たい」としたのもこの点なのだが、そうした視点は日経を含め他紙には見当たらない。あるのは財政規律の視点だけだ。

 高市政権は財政規律では、債務の対GDP(国内総生産)比率の安定的低下を志向する。こうした新しい取り組みに市場(メディアもそうだが)は依然として、条件反射的に財政危機と認識し、長期金利上昇、為替は円安という方向に振れやすい状況が続く。高市政権としては実績の兆候が見えるまでは我慢のしどころで、それまではさらなる物価高を招く円安には介入する姿勢で臨まざるを得ないだろう。

 首相の消費減税方針は5日に閣議決定された。財源が全く見込めないわけでなく、税収は好調で上振れも期待できそうな状況である。批判は経済の客観的状況や同方針への理解不足、過小評価の面が少なくないようだ。

(床井明男)

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