トップオピニオンメディアウォッチ【新聞】スパイ問題で意図的な「特オチ」の朝日による「情報操作」にご用心を

【新聞】スパイ問題で意図的な「特オチ」の朝日による「情報操作」にご用心を

米紙「日本が拠点に」

 新聞用語に「特落ち」というのがある。ある一つの新聞が、他の新聞が報じている大きなニュースについて報じなかった(報じられなかった)状態を指す言葉で「特オチ」とも表記される。意図的なものであれば問題はないが、何かのミスによるものであれば、そのジャンルの担当記者は激しく叱責されることになる、とマスコミ情報サイト「メディアポ」の新聞社用語辞典にある。では、朝日の特オチはどうだろう。1カ月前の話でいささか旧聞に属するが、今後の政治テーマに関わる問題なのであえて取り上げたい。

夜の朝日新聞東京本社ビル
夜の朝日新聞東京本社ビル

 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は7月12日、衝撃的なニュースを伝えた(電子版)。ロシアが2022年にウクライナに侵攻して以降、日本が西側諸国から追放されたロシア人スパイの活動拠点になっており、日本で調達した軍需物資がロシアに流れているというのだ。

 これを共同通信はワシントンとキーウ電で配信し、毎日や地方紙は「日本にロシアスパイ拠点 軍需物資調達や密輸」(福島民友など)と報じ、産経はワシントン特派員電で「『日本は露スパイの巣窟』 ウクライナ侵略後 数十人が滞在か」、読売はNYTに名指しされた日本国内の運送企業の執行役員を独自取材し、いずれも14日付に掲載した。共同が配信したので沖縄タイムスなど地方の左派紙も含めて全紙が14日付で報じたとみてよい。

知らないはずがない

 共同電にはこうある。「ウクライナ政府はロシアのミサイルや無人機の90%に日本の部品が使用されていると推計。各国はこうした現状について日本に繰り返し警告してきた。同紙(NYT)は『日本はスパイの楽園として知られてきた』と指摘」した。スパイ活動に対する法律が緩く、ハイテク産業が盛んな現状と相まってロシアの活動を許したと伝えている。

 これは看過できないニュースだろう。毎日の記事には共同電に続けて木原稔官房長官が13日の記者会見でNYT報道への見解を問われ、「『個別の事案になるため、答えは差し控える』と述べた」と記している。NYT報道は国際担当記者だけでなく国内の政治部記者たちも知り得たメジャーなニュースになったのだ。だから朝日が知らないはずがない。

 ところが、14日付の朝日紙面のどこを探してもこの記事が載っていない。見事なまでの特オチである。これが何らかのミスによるものとは到底、思われない。意図的なもの、つまり「報道しない自由」で報じなかったとしか考えられない。だが、他紙一斉の報道で、さすがにまずいとの声が上がったのか、1日遅れの15日付で報じた。その扱いは大きくもなく小さくもなく“絶妙”だった。3面の下段にまるで報じましたよと言わんばかりに「ロシアのスパイ 東京に拠点か」とのベタ白抜き見出しを立て、「米紙NYT報道 西側諸国追放され、日本に数十人 対ウクライナ兵器の部品調達」としている。

活動触れぬ「後追い」

 「後追い」は何らかの新たな情報を入れて記事にするものだが、朝日記事はNYTが報じた「スパイの楽園」にはさほど触れず、「経済産業省はロシアへの迂(う)回(かい)輸出を防ぐための注意を呼びかけている」と貿易問題として扱い、スパイ活動から目を逸(そ)らしている。これも絶妙と言うべきか。執筆者は記事末尾に「松山尚幹」とある。朝日のウェブサイトで見ると国際報道部の内勤記者だった。

 元来、朝日は「NYTから読み解く世界」と題する記事を売りにしてきた。同社ホームページは「最新の国際ニュースをどう読み解くか。世界が注目するニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の調査報道や解説記事について、同紙と提携する朝日新聞が厳選して翻訳した記事をお届けします」と胸を張っている。それならば「スパイの楽園」記事を他紙よりも詳しく報じてよさそうなものだが、残念なことにそれはなかった。

 先月末に国家情報局が新設され、外国代理人登録法などスパイ防止法制論議がいよいよ本格化する。朝日など反対派のあの手この手の「情報操作」にくれぐれもご用心を。

(増 記代司)

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