中国の対日輸出規制
昨年11月、就任間もない高市早苗首相が衆院予算委員会で、台湾有事を巡る「存立危機事態」について「わが国の同盟国の艦船が武力攻撃を受けた場合を指す」と答弁したことに中国が過剰に反応し、以来、さまざまな形で対日圧力を強めている。その一つがレアアース(希土類)の輸出規制。レアメタル(希少金属)であるタングステンなどの輸出規制も強めて日本に揺さぶりを掛けている。もっとも、これは今に始まったことではなく、2010年前後から事あるごとに対日外交・経済圧力のカードとして使ってきた。従って、高市発言への中国の対応も「またか」という感は拭えないのだが、わが国も手を拱(こまね)いているわけにはいかず、高市内閣もサプライチェーン(供給網)の構築のために東奔西走しているようだ。
そうした中で、資源の少ないわが国において「再生資源」に焦点を当てて経済誌が企画を組んでいる。一つが週刊エコノミスト(7月14日号)の「資源循環サバイバル」。もう一つが、週刊ダイヤモンド(6月27日・7月4日合併号)の「鉄スクラップ争奪戦」である。どちらの企画も覇権争いが激化する世界情勢の中にあって、環境問題あるいは経済安全保障の観点から、単なる輸入による鉱物資源確保にとどまらず、日本国内で廃棄されたペットボトルやパソコン、スマートフォンなどを、いわゆる〝都市鉱山〟として位置付け、企業の世界戦略の練り直しを紹介している。

「国内優先」へと変化
折しも政府は今年4月21日、「循環経済行動計画」を発表した。それによれば、30年までに、アルミニウムは国内生産量の約40%、銅は国内生産量の約30%を再生資源由来のものとし、永久磁石についても国内供給原料の約30%はリサイクル材で賄う。また、鉄に関しても高品位スクラップ処理能力を年間約200万㌧確保と数値目標を立てている。
このうち鉄に関して、ダイヤモンドは次のように指摘する。「再生資源は〝世界で流通する資源〟から〝国内で回す戦略資源〟へと変わりつつある」とした上で、「実際、中国やインドなど各国で鉄スクラップは輸出規制や課税措置が広がっており、鉄スクラップはエネルギーや食糧と同様、〝国内循環を優先する資源〟へと変わり始めている」と強調する。
これまで産業廃棄物から出た廃材の処分は環境対策として取り扱われる側面が強かったが、今回は「循環資源」として政府が本格的に位置付けたとも言える。その背景には、ダイヤモンドが指摘したように、「中国の供給制約」がある。日中関係の冷え込みが今後も続きそうな気配を見れば、さらなる供給制約につながっていくであろう。さらにもう一つ、エコノミストが欧州の動きを挙げる。例えば、自動車について「新車に使うプラスチックの一定割合を再生プラスチックにすることを求め、最終的には25%まで上げる見通しだ。……その基準に達しなければEU市場に参入できなくなる」と指摘。脱炭素を背景に再生資源の活用は世界的潮流になりつつあるというのである。
米国との希土類開発
一方、レアアースについては、日本を取り巻く海域には多くの埋蔵量があり、実用化へ向けて本格試掘に取り掛かるが、これについてエコノミストは「夢とロマンに満ちた話ではあるが、資源安全保障という観点からは非現実的だ。かかるコストのケタが違いすぎる」(岡部徹・東京大学生産技術研究所教授)と悲観的だ。もっとも、現段階で採算に合わなかったとしても、高市首相は米国との共同開発を謳(うた)っている。それだけでも米国と経済的・軍事的同盟関係をアピールすることができる。また、南鳥島沖での深海約6000㍍での採掘技術の確立は決して無駄になることはない。何よりも中国が西太平洋の覇権を狙い北朝鮮・ロシアとの軍事同盟関係を強化しながら、わが国に対して情報分野や経済的側面から圧力を強めてきている実情を見れば、「循環資源」体制の早急な構築の必要性は論をまたない。
(湯朝 肇)






