保守系3紙のみ論評
2日付日経「成長持続へ物価高と円安への警戒強めよ」、5日付読売「物価上昇リスクに警戒が要る」、6日付本紙「コスト高の広がりに要注意」――。

日銀が1日に発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)に対する掲載紙社説の見出しである。今回も掲載は保守系3紙だけ。
3紙の論評だが、いずれも物価の上振れリスクに注意や警戒を要するとして、日銀の利上げ路線を支持する姿勢を示し、この点で大きな相違はなかった。違いは日銀に対する政府の姿勢への注文である。
特にその度合いが強かったのは、日経である。同紙は物価の上振れリスクを指摘する中で、原油高は峠を越した可能性もあるが、歴史的な円安が輸入物価をさらに押し上げかねないとして、「政府はインフレを放置しないと明確に宣言し、日銀の利上げ路線を支えるべきである」と強く訴えるのである。
読売は日銀への注文
これに対し、読売は最初の部分で「政府と日本銀行は、高まる物価上昇リスクに対し、警戒を強める必要がある」と指摘する程度で、文末では「日銀は、早期利上げに慎重とされる政府側と、丁寧な意思疎通を図ることが求められよう」と政府でなく日銀に対する注文で締めた。本紙は円安の進行で輸入コストがさらに上昇すれば、消費への影響が憂慮されるとして、「政府・日銀は過度な円安進行に断固たる措置で臨んでもらいたい」と述べるだけである。
日経の注文は、読売が指摘した「早期利上げに慎重とされる」政府への批判ということである。日経は、政府が先月末に示した経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の原案が、「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」などとうたったことを問題視。この表現を、市場は「利上げに慎重な証し」と受け止めているとして、「再考すべきだ」と批判するわけである。
高市早苗政権は「骨太の方針」原案で、「強い経済」の実現に向け戦略分野への成長投資・危機管理投資を軸とする経済財政運営に抜本転換し、実質で1%、名目で3%を上回る経済成長の早期定着を目標に掲げた。
日銀もそうした政府の財政政策と足並みをそろえるよう求めたということだが、強い経済を目指すとした以上、基本的に景気にブレーキをかける利上げは極力避けてほしいという意味であろう。
日経が指摘するように、「強い経済」には物価や円相場の安定を通じて企業や家計が安心して活動できる環境づくりが欠かせない。
だからこそ、高市政権は現に物価高対策に取り組み、輸入インフレを招く過度な円安の進行に対しては片山さつき財務相が事あるごとに介入も辞さない姿勢を示しているわけである。国民経済への影響が小さくない利上げは最終手段という認識に政府も日銀も大きな相違はないだろう。
もっとも、現在は追加利上げを実施するにしてもインフレ予防の性格が強く、また政策金利は、景気を刺激も抑制もしない中立金利(現在の日銀の想定で1・1~2・5%程度)の範囲内にある。政府としても、何が何でも利上げに反対というわけでもあるまい。
日経の注文は、高市政権がこれまでにない経済財政運営を進めようとすることへの市場の反応(財政不安による長期金利の上昇)などからだが、他紙も日経と同様の見方をしている。
財政への見方再考を
安全保障問題など諸々(もろもろ)の事情から国の将来のために「強い経済」を目指すとした高市政権に、国民は先の衆院選で圧倒的支持で国の運営を託したわけである。
高市政権が財政単年度主義の見直しを表明するのも、中長期的投資に不都合が多いなど弊害が少なくないからで、理にはかなっている。機械的な赤字削減も問題が多い。財政問題に対する従来の見方を、新聞をはじめ市場関係者も冷静に再考すべきではないか。
(床井明男)






