
情報戦で劣勢の恐れ
週刊新潮で連載している櫻井よしこ氏の「日本ルネッサンス」が6月25日号で1200回を迎えた。櫻井氏は記念対談として木原稔官房長官を訪ね、「発足240日『高市政権』の〝軍師〟が明かす日本の行方」を聞いている。
「支持率下げてやる」の時事通信が20日発表した世論調査では、自民党の支持率は選挙前の水準近くにまで低下した。一方、高市内閣の支持率も54・3%(前月比5・1ポイント減)に急落。政権発足以来の最低値を記録したという。
国会では、野党が一部の週刊誌を情報源とした「ネガキャン動画」追及で貴重な時間を浪費し、皇室典範の改正、憲法改正、消費税問題などで議論がなかなか深まらない。国政を前に進ませることよりも、政権の足を引っ張ることに野党もメディアも血眼なのだ。報道機関が政府の意図を敢(あ)えて「伝えまい」とする態度で臨めば、「負託を受けている」とメディアが言い張る「国民の知る権利」に応える役割を正しく果たしているとは言えない。
櫻井氏は「もっと政府が分かりやすく説明する工夫をしないと〝情報戦〟で劣勢に立たされませんか」と木原氏に問うと、官房長官は「まさにそう感じます」と応じて、佐伯耕三内閣広報官が、SNSのX(旧ツイッター)でアカウントを作り情報発信していると紹介した。
ドナルド・トランプ米大統領が、自身が立ち上げたSNSで政策や方針を次々に発信し、メディアの先回りをしている。メディアの〝検証された情報〟も必要だが、それが「支持率下げてやる」のような特定の意図で歪(ゆが)められることに対抗しようと思えば、政権側から一次情報を発信することも重要だ。メディアの役割の本質が問われている。
コミュニケーション力といえば、高市陣営が「ネガキャン」対象に挙げたと週刊誌が主張する小泉進次郎防衛相が挙げられる。彼に対して木原氏は「コミュニケーション能力と発信力が高い」とべた褒めし、「日本の立場を各国に理解してもらうべく頻繁に各国を訪問しています」と述べた。週刊誌が主張する「動画」では小泉氏を「カンペで炎上!無能で炎上!」と貶(おとし)めていたはずだが、高市早苗首相はその人物を起用して情報発信の先頭に立たせている。何が正しいか、読者は目を凝らし、耳を澄まさなければならない。
日本の安保環境に懸念
櫻井氏は日本を取り巻く安全保障環境について懸念を示した。「中朝とロシアは核を保有する専制国家」であることに加え、習近平中国国家主席が北朝鮮を訪問して「非核化」を求めなかったことを合わせると、「年内改定を目指す政府の国家安全保障戦略の基本指針『安保3文書』で『核』を論じないのなら、国民への責任を果たせるのか甚だ疑問です」と切り込んだ。
木原氏はさすがに「私の立場(内閣官房長官)ではなかなか(核問題は)言いにくい」としつつも、「中朝の軍事力の増強、あるいは中露、露朝の連携強化は事実です」との認識を示し、「まさしく今、『3文書』を作るにあたり、そうした安保環境の変化に迅速に対応すべきです」と述べた。「変化」とは「無人機の大量運用による新しい戦い方」「長期戦への備え」などを念頭に置いたものだ。
核問題については言葉を濁しながらも、「日本は自らの国は自ら守るとの強い覚悟を持ち、国民の命と平和な暮らしを守り抜く」との原則論にとどめた。
防衛装備移転三原則の改正「いわゆる『5類型の撤廃』」について、アジア、欧州各国が好意的な反応を示したことに加えて、木原氏は「韓国との関係がうまくいき始めたことも大きい」との見方を示した。現在、高市首相と李在明大統領との間でシャトル外交が順調に行われ、防衛交流と協力も再開している。「連携強化は、日米、米韓関係にとっても良い方向へ作用する」と評価した。
日韓は〝大人の対応〟
確かに日韓関係は、共にトップに就く前にはお互いに対して厳しい言動があったが、安保環境、経済・関税問題など共通に対応していかなければならない課題が増え、日韓は〝大人の対応〟をしている。ただし、政権支持率が低下してくると韓国では「反日カード」が切られてきた歴史があり、最近、その兆候が見えなくはない。条約や協定など国家間の約束に則(のっと)った原則的態度を維持しなければならないだろう。
対談では「高市首相」の姿、考えが浮かんでこなかったが、〝軍師〟の働きに期待する。
(岩崎 哲)






