トップオピニオンメディアウォッチ補正予算で財政に言及せずナフサ不安に焦点当て的を射た日経社説

補正予算で財政に言及せずナフサ不安に焦点当て的を射た日経社説

いろいろな石油由来の加工商品
いろいろな石油由来の加工商品

他紙は規律欠如批判

 5月27日付東京「必要な人への支援こそ」、6月1日付朝日「国会は精査を厳しく」、4日付読売「燃料代補助の縮小明確にせよ」、6日付日経「物価高招くナフサ不安に丁寧な情報を」、同毎日「展望を欠く場当たり対応」――。

 一般会計の歳出総額が3・1兆円規模の2026年度補正予算が5日、与党と国民民主などの賛成多数で成立したが、その前後で同予算(案)に対して各紙が掲げた社説見出しである。

 他紙は、ほとんどが予備費で財政悪化や財政規律のなさを問題視する中、それらに一切言及せず、喫緊の課題であるナフサ不安に焦点を絞って政府に丁寧な情報発信を求めた日経社説は、経済紙として一日の長があると感じた。

 日経の補正予算に対する論評は、「使途はガソリン代補助の継続が中心だ。物価高を招くナフサ関連製品の調達不安の払拭にはつながらない」の一言。これだけである。

 喫緊の課題として、「中東情勢の混乱で産業資材の調達に懸念が広がっている」という状況があるだけに、ナフサ不安への対処は当然、実行すべき政策の優先順位の筆頭にあるという判断だろう。

政府に危機感のずれ

 日経は政府と企業の現場の間に「危機感にずれがある」と指摘。政府に対し「流通の各プロセスにおいて何が起きているのか、どれだけ過不足があるのか、現場の状況に即したリアルタイムのデータを可能な限りつかむことが重要だ」として、流通に携わる企業や業界団体と緊密に連携してサプライチェーン(供給網)の子細な動向を分析し、適切な経営判断ができる材料を共有することが急務と強調する。

 また、同紙はナフサの価格高騰の影響を受ける中小企業への目配りも要るとして、「資金繰りや価格転嫁に苦しむ企業への支援も検討すべきだろう」と説くが、その通りである。こうした指摘は他紙にはない。

 他紙の論評で意外だったのは、東京が厳しいながらも、一定の理解を見せた点だ。補正予算案の対策の中心が高騰しているエネルギーの負担軽減だとして、「長引く原油高が景気に与える悪影響は今後本格化する可能性が高く、暮らしへの支援は不可欠だ。中東情勢は見通せず、状況の変化に備え、予備費を厚めに計上しておくことはやむを得ない」という具合だ。

 ただ、「問題は対策の中身だ」として、「ガソリンの一律補助は燃費の悪い大型高級車に乗る人も、地方での生活に欠かせない足として小型車に乗る人にも等しく恩恵があり」、「電気・ガス代の補助も、富裕層や好業績の企業にも恩恵が及ぶ」と批判、「低所得者や零細企業、物流業者など苦しむ人や事業者への支援こそ厚くするのが筋ではないか」と指摘する。

 こうした指摘は、朝日や読売、毎日にもある。朝日、毎日はガソリン補助を続けることの妥当性に自民党幹部からも苦言が相次ぐとして、「補助の規模の見直しにとどまらず、一律の支援から脱却し、負担が大きい企業や個人に絞った支援策の制度設計の検討に踏み出すときだ」(朝日)などと記す。

円安要因はさまざま

 確かに、ガソリン代補助ではこれまでに9兆円規模の財政資金を投じてきただけに見直しは一理あり、高市早苗首相も国会質疑で補助縮小を示唆する発言を行っている。

 ただ、読売などの「家計の支援策を講じることが大切とはいえ、市場に財政悪化への警戒を強めさせるやり方では逆効果になりかねない」は言い過ぎか。

 逆効果とは財政不安から「円安と物価高の連鎖が続き、物価高対策も帳消しとなってしまう」ことだが、最近は物価高の円安要因はそれほど大きくなく、財政不安だけが円安の要因でもない。日米金利差や国際情勢など要因はさまざまだ。財政不安による円安での物価高を挙げるなら、石油関連製品の価格上昇が目立つ現状では、日経のようにナフサ不安への対処の方が重要だろう。

(床井明男)

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