トップオピニオンメディアウォッチ辺野古沖沈没事故 人命よりもイデオロギー的論調を優先する朝日

辺野古沖沈没事故 人命よりもイデオロギー的論調を優先する朝日

船転覆事故で、運航していた市民団体「ヘリ基地反対協議会」の事務所を家宅捜索した第11管区海上保安本部の捜査員ら=20日、沖縄県名護市
船転覆事故で、運航していた市民団体「ヘリ基地反対協議会」の事務所を家宅捜索した第11管区海上保安本部の捜査員ら=20日、沖縄県名護市

72日目にやっと社説

 重大事故なのに社説なし。そんな異様な態度を続けてきた新聞がついに社説を掲載した―。これはやはり、オールドメディアを巡る無視できないニュースだろう。

 それは朝日のことである。今年3月16日に沖縄県名護市の辺野古沖で同志社国際高校の生徒らが乗った小型船2隻が転覆し、女子生徒らが死亡した海難事故について朝日はこれまで一度も社説で取り上げてこなかった。それが事故発生から実に72日目の5月27日付にようやく掲載した。まるで「人の噂(うわさ)も七十五日」と言わんばかりにこの間、押し黙ってきたのである。が、文部科学省が事故を巡る調査結果を公表するに至って(5月22日)、黙し切れなくなったのだ。

 もっとも産経と読売は翌23日付に早々と社説を掲載しており、朝日社説はその4日後で如何(いか)にも遅い。この間、思考停止なのか、「不都合な真実」には沈黙なのか、知らぬ顔の半兵衛を決め込んできた。こんな重大事故での社説スルーは前代未聞、朝日社史のみならず、わが国の新聞史にも記録を留(とど)めてもらいたい。

調査結果に「逆ギレ」

 さて、前置きが長くなった。朝日社説は文科省の調査結果を取り上げているので、まずそれを見ておこう。一言で言えば、文科省は「安全も中立も欠いた平和教育」(読売社説)と断じているのである。学校は乗船への下見もせず、引率の教員も同乗せず、悪天候や事故の発生も想定せず、乗船したのは米軍普天間飛行場の辺野古移設反対派の抗議船で、過去には反対派は座り込みへの参加も求めている。研修旅行の内容は「特定の見方・考え方」に偏っており著しく不適切で政治的活動を禁じる教育基本法に反する―、というものである。だから産経も「政府の見解と告発は重い」としている。

 これに対し朝日社説は「辺野古巡る学習 違法認定に大きな疑問」と調査結果に異議を唱える。安全については「ずさんな安全管理で17歳の尊い命が奪われた。痛ましく憤りを禁じ得ない」として調査結果を是とするものの、社説の大半は教育基本法に対する自論を並べ立てて調査結果を批判している。本当のことを言われると怒る人がいるそうだが、まさにその「逆ギレ」を思わせる。

 それにしても「痛ましく憤りを禁じ得ない」とはよくも言えたものである。同事故を巡っては「反戦無罪」を思わせる姿勢に終始してきたのが朝日ではなかったか。いったい誰が「ずさんな安全管理」で命を奪ったのか、社説には主語がない。誰に対して「憤りを禁じ得ない」のか、これには目的語がない。船の運航になら抗議団体「ヘリ基地反対協議会」、学校になら同志社国際高校、両者にならそれを記すのが記事の基本のキである。驚いたことに朝日社説にはそれがないのである。

紙面に「憤り」見えず

 そもそも「憤り」は事故発生以降、朝日から聞いた覚えがない。「禁じ得ない」とは自分の気持ちを抑えられない、沸き上がってくる感情を止められないという意味だが、朝日紙面にそんな気持ちは微塵(みじん)も感じられない。だから「痛ましく憤りを禁じ得ない」と書くのは、姑息(こそく)な批判逃れと言うほかないのである。

 だいたい文科省の調査結果を報じる23日付紙面のどこにも「ずさんな安全管理」への「憤り」がない。1面トップは「辺野古学習『政治的中立欠く』 文科省、違法認定 同志社国際の研修」で、著しく不適とされた平和学習を擁護するような「教員に萎縮広がる懸念」との見出しも立てている。2面の特集ワイド「時時刻刻」は「異例判断、問われる中立性 教育内容の確認求め、自民が官邸に提言」と自民党批判の政局記事にすり替え、下段にわずかに「遺族『全容解明や再発防止へ前進』」とあるだけだ。

 朝日は人の尊い命よりもイデオロギー的解釈を優先させているのである。こんな論調が闊歩(かっぽ)すれば国民は幾つ命があっても足りなくなる。

(増 記代司)

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