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イスラエル社会で反キリスト教的言動が増加、歴史的因縁の覚醒?

旧市街 エルサレム イスラエル

唾吐き、暴言、落書き

 イスラエルでキリスト教関連施設への攻撃や信者への嫌がらせが立て続けに起きている。レバノン南部のデブル村でイスラエル軍兵士が先月19日、ハンマーでイエス・キリストの像を損壊する画像がSNSで拡散された。

28日にはエルサレムのシオンの丘近くで39歳のユダヤ人男性が、道を歩いていたフランス人修道女を突き飛ばし、倒れた修道女を足蹴(あしげ)にするなどの暴行を加えた。修道女への暴行事件の様子は今月3日に入って動画で拡散され、イスラエル国内に衝撃を与えた。12日にはレバノン南部で聖母マリア像の口にタバコを押し付けたイスラエル兵士に3週間の拘禁刑、その様子を撮影した同僚兵士に2週間の拘禁刑が科せられたばかりだ。

 イスラエル国内における反キリスト教的な言動(聖職者への唾吐き、暴言、教会への落書きや破壊行為など)の急増は、現地メディアやシンクタンクによって報道され、深刻な社会問題として分析・論評されている。特に、エルサレムに拠点を置く宗教間対話団体「ロッシング・センター」や「宗教の自由データセンター(RFDC)」が発表する年次・四半期リポート をベースに、イスラエルの主要紙「ハーレツ」や「タイムズ・オブ・イスラエル」などが詳細な解説記事を掲載している。それによると、2025年の1年間だけで155~181件の反キリスト教的嫌がらせが記録された。

国際的信用への脅威

 国内で増加する反キリスト教的言動に対して各紙は、国内で極右政治が台頭してきたこと、宗教教育や社会的偏見を指摘する声を紹介している。リベラル系のハーレツ紙や現地のキリスト教指導者たちは、「イスラエルという国家の民主主義と国際的信用に対する死活的な脅威だ」と警告している。また、アメリカをはじめとする海外のキリスト教徒からの支持を失うリスクや、エルサレムへのキリスト教巡礼者が激減することによる観光業への大打撃が懸念材料として挙げられている。

 それだけではない。歴史的背景や宗教的因縁に深く踏み込んだ報道や論評も見られる。イスラエル国内の報道では、一連の反キリスト教的事件を単なる「最近の若者の非行」として片付けるのではなく、「イエスの時代から続くキリスト教とユダヤ教の血塗られた歴史的因縁」を現代の政治的状況が呼び覚ましてしまっているという、宗教歴史的アプローチからの解説も見られる。ガザ情勢やレバノン国境での緊張が続く中、宗教的なアイデンティティーが先鋭化し、他宗教への不寛容さが攻撃的な形で表出しやすくなっている、という分析だ。

 ちなみに「メシア殺害民族」「神殺し」というキリスト教会側の歴史的な非難については、2000年間にわたりキリスト教徒から「お前たちはイエス(神)を殺した民族だ」と罵声を浴びせられ、十字軍、ポグロム(虐殺)、ホロコーストなどの凄惨(せいさん)な迫害を受けてきたと指摘し、「それがユダヤ人の歴史的トラウマとなっている」といった声もある。

 ユダヤ教関係者からは、①十字架刑は当時の統治者であるローマ帝国の刑罰であり、ユダヤ教の処刑方法(投石など)ではない②当時のユダヤ教指導層の一部が関与した可能性は否定できないが、民族全体や後世の世代に責任を負わせる「民族的罪」という考え方は不当③ユダヤ教の教義において、イエスはメシア(救世主)の条件を満たしていないから、神殺しという概念自体が成立しない―等々の反論が聞かれ、キリスト教側の「虚偽の主張」として退けられている。

国家機関の対処要望

 バチカンニュースが報じたところによると、イスラエル議会(クネセト)の移民・統合・ディアスポラ委員会は13日、エルサレム旧市街におけるキリスト教聖職者や巡礼者への嫌がらせについて協議するため会合を開いた。同委員会のギラド・カリブ委員長は「イスラエルの根本的な価値観を損なうキリスト教徒への攻撃という“忌まわしい現象”に対し、すべての国家機関が対処しなければならない」と述べている。

(小川 敏)

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