
介入で5円の円高に
5月2日付読売「中東情勢に乗じた投機許すな」、毎日「対症療法では是正できぬ」、日経「中東緊迫化の市場安定へ万全の対応を」――。
4月末に外国為替市場で円相場が一時、1㌦=160円台後半まで下落した後、政府・日銀が海外市場で円買い・ドル売りの為替介入により、翌日には一転して一時155円台半ばと大幅高となったことについて、社説で論評を掲載した各紙の見出しである。
産経は同日付の金融政策を扱った社説でこの為替介入に触れているので、前述の3紙と同様に小欄で論評したい。
まず3紙だが、見出しの通り、為替介入に対し読売と日経は評価する一方、毎日は厳しく批判し論評が分かれた。
読売は中東の混迷に乗じた投機的動きには「毅然とした対応を取ることが重要だ」と指摘し、「行き過ぎた円安は、輸入物価の上昇に拍車をかけかねない。こうした日本の弱点につけこむような投機は、許されてはならない」と強調する。
日経も「原油高に過度な円安という二重のインフレ圧力は、それに伴って起きる債券安の影響も含め、日本経済に強い負荷をかける」「大型連休中の投機的な円売りに先手を打とうとした当局の意図は理解できる」として、政府・日銀に市場の安定へ万全の対応をとってほしい、と要望した。妥当な評価だろう。
円安背景に複数要因
これらに対し、批判の毎日は「是正が急がれるが、高市早苗政権は対症療法に終始するばかりだ」がその理由だ。
「是正が急がれる」としたのは、同紙が「政府は日本市場の取引が薄くなる5月連休中に投機筋が円売りを仕掛けることを警戒し、介入に踏み切ったとみられる」と記すように、読売や日経と同様、介入の事情を理解しているからだが、それでいて、急ぐべき是正策については全く言及せず、投機的動きにも批判の言葉はない。ただ高市政権の姿勢を批判するだけだ。これでは一方的で偏った論評でしかないだろう。
毎日は「歯止めがかからないのは、高市政権が円安の背景にある構造的な問題に手を付けようとしていないからだ」と批判するが、円安の背景は同政権の構造的な問題(「責任ある積極財政」のこと)だけではない。
3紙いずれもが指摘するように、日米の金利差が大きいことや原油高による貿易赤字の拡大、原油輸入時の円売り需要の増加などのほか、「有事のドル買い」といった要因もあろう。ことさら、高市政権の姿勢だけを批判するのは怪訝(けげん)というほかない。
もちろん、他紙も認めるように、為替市場の取引規模は大きく、「介入は時間的な猶予を得るにすぎない」(読売)、「市場の大きな流れを変えるのは難しい」(日経)のは確か。しかし、だからといって、過度な円安進行に対して無策でいいわけはでない。「エネルギーを輸入に頼る日本にとって原油高と円安のダブルパンチは企業の収益や家計の所得を圧迫する」(日経)だけに、「原油高に過度な円安という二重のインフレ圧力」(同)に対しては猶更(なおさら)と言える。
日経は利上げも注文
毎日は為替介入という「飛び道具」に頼るだけでは責任ある政治姿勢とは言えまいと批判するが、過度な円安に対しては「飛び道具」に頼るしかなく、果敢に実行した高市政権は褒められこそすれ、批判は当たらないだろう。
読売、日経も毎日と同様、財政の信認を得る努力を指摘しているが、日経はさらに「日銀は景気に配慮しつつも適切なタイミングで利上げをためらうべきではない」と注文。踏み込んだ指摘で評価したい。
その金融政策で社説を掲載した産経は、「後手に回らず物価警戒を」と日経と同様の利上げを示唆する論評を示し、介入については「効果は一時的だとしても、投機的な思惑で過度に円安が進むのなら厳正に対処すべきだ」とした。やはり、これが素直な評価だろう。
(床井明男)





