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イラン戦争の背景と今後の世界動向を地政学から分析するエコノミスト

領土問題に宗教絡む

 2023年10月、イスラム過激派組織ハマスによるイスラエル攻撃によって始まったイスラエルとパレスチナとの戦いは、今や米国を巻き込みながらイランとの戦争に拡大している。そもそも中東は「世界の火薬庫」と称されてきた。領土問題に宗教が絡み、しかも長い歴史的な怨念を抱えていることからその収拾が難しいと見なされている。日本から遠い地域のことだが、石油の生産地であるためわが国への影響は甚大。早い解決を望むところだが、先が見えない状況だ。

 こうした中で週刊エコノミスト(4月7日号)が、今回のイラン戦争の背景と石油の動向を分析した。「イラン戦争と石油危機」と題した特集だが、2月28日から始まった米国・イスラエル対イランのイラン戦争に焦点を当てて論じてみたい。

 そもそも米国がイランに対して軍事的な攻撃を加えるのは今回に限ったことではない。近いところでは昨年6月にも新型ミサイルを使ってイランの核施設を空爆しているのである。ただ今回はイランの最高指導者ハメネイ氏をはじめとする幹部らを大量に殺戮(さつりく)したことがイランの報復につながっている。

 ところで、エコノミストは今回の米国・イスラエル対イランの戦いを地政学の視点から取り上げた。「イランは古来、大陸国家と海洋国家の利害が激突する地だ。現代はイスラエルが米国の代理人として、中露の支援を受けるイランと敵対する」(篠田英朗・東京外語大教授)と読む。

せめぎ合う2大勢力

 かつて英国の地理学者であったハルフォード・マッキンダーが20世紀初頭に「20世紀はランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)のせめぎ合いによって世界の歴史は作られる」と予測した。大航海時代以降スペイン、オランダ、英国といったシーパワーが優勢を誇っていたが、鉄道の登場でランドパワーが勢力を拡大させることになる。その先鞭(せんべん)をつけたのがロシアだったとマッキンダーは説くのである。

 確かに東欧を支配したソ連は、米国を盟主とするシーパワー陣営に脅威を与えた。ソ連が崩壊した後もロシアのプーチン大統領は中国、イランと連携を強化させ、ランドパワーの復権を懸けてウクライナを侵攻しているとも言える。この関係をイランという地図的な視点から見れば大陸国家のランドパワーと海洋国家のシーパワーがじかにせめぎ合う地域となっており、なおかつ石油という切り札を持っていることが、国際動向を一層複雑化させている。

 「イランは2024年にロシア、中国を中核とするBRICSに加盟した。現在の戦争で米国・イスラエルに対峙できる背景にはロシア・中国というパートナーとの間で築かれた紐帯がある」(篠田教授)がために、米国に一歩も引かない構えを見せることができるのだという。

第3次大戦の前哨戦?

 もう一つ、今回の特集として目を引いたのが、今回の米国のイラン攻撃に対して「第3次世界大戦の前哨戦か」と小見出しを付けた記事である。在米ストラテジストと称する滝澤伯文氏によるものだが、それによると米国は先の2度にわたる世界大戦で「自らの影響力が及ぶ国に米国の代理戦争をさせ、敵の枢軸国が消耗したところで漁夫の利を得るという覇権獲得の定石を学んだ」とし、今回もその構図の通りに動いていると分析する。

 具体的には、近年において「代理戦争の一幕が22年のロシア・ウクライナ戦争、第二幕が今回のイスラエルとイランの紛争であり、最後は台湾を巡り、日本と韓国が米国の代理として中国と戦い、米国の覇権を完成させる」といったシナリオを描く。

 もっとも、日本と韓国が率先して米国の代理として中国と戦うというのは非現実的だろう。日韓が一緒になって戦争するほどの同盟関係にないのも一つ。ただ、中国が台湾を武力で侵攻した時は話が変わる。それはまさに有事であり、日本・韓国、そして米国を巻き込んだ戦いになる可能性は高い。さらには中国を支援するためにロシアや北朝鮮が動けば、欧州諸国も参戦し、第3次世界大戦となる可能性はないとは言えないのである。

(湯朝 肇)

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