
直接批判に猛烈反論
AP通信のウィル・ワイサート、ジョシュ・ボーク両記者は「トランプ米大統領は12日夜、レオ14世に対し異例の激しい非難を浴びせた。レオ14世を『あまり良い仕事をしていない』『非常にリベラルな人物だ』と指摘。『過激左派に迎合するのをやめるべきだ』と示唆し、『私はレオ14世のファンではない』と述べた」と報じた。
一方、レオ14世は、トランプ大統領の政策の問題点についてかなり積極的に発言してきた。最初は移民税関捜査局(ICE)の行動について、次にベネズエラへの介入について、そして最近では異例の率直さでイランとの戦争について発言している。レオ14世の一連の発言はワシントンではトランプ大統領批判と受け取られた。
AP通信は「ローマ教皇と米大統領の意見が食い違うことは珍しくないが、教皇がアメリカの指導者を直接批判することは極めて稀(まれ)であり、トランプ大統領の痛烈な反論は、それ以上に異例と言えるだろう」と総括している。
ちなみに、トランプ氏は「教皇レオ14世は感謝すべきだ。周知の通り、彼の選出はサプライズだった。教皇候補リストには載っていなかった。米国人だったからこそ教会が選んだのだ。ドナルド・J・トランプ大統領に対処する最善の方法だとコンクラーベに参加した枢機卿たちが考えたからだ。私がホワイトハウスにいなかったら、レオはバチカンにいなかっただろう」とTruth Socialで語っている。
教皇選出時は称賛も
トランプ氏はレオ14世に対し常に批判的だったわけではない。トランプ氏は昨年5月の教皇選出の時、「米国人の教皇が誕生したことは、わが国にとってこの上ない名誉だ」と語っていたのだ。
レオ14世は4月11日、サン・ピエトロ大聖堂で夕方の祈祷(きとう)会を執り行った。この日は、米国とイランがパキスタンで直接会談を開始した日でもあった。教皇は米国やトランプ大統領の名前を直接挙げることはなかったが、米国がその軍事的優位性を誇示し、宗教的な観点から戦争を正当化することはできないとはっきりと主張している。
同14世は、「神は戦争を仕掛ける者の祈りを聞き入れず、拒絶する」と述べている。また、旧約聖書イザヤ書の一節を引用し、「あなたがたが多くの祈りを捧(ささ)げても、わたしは聞かない。あなたがたの手は血で満ちている」とも語っているのだ。かなり厳しい審判だ。
停戦合意前、トランプ大統領がイランの発電所やその他のインフラに対する大規模攻撃を警告し、「今夜、一つの文明が滅びるだろう」と述べた際、レオ14世は「そのような発言は到底容認できない」と非難し、「民間インフラへの攻撃は国際法違反である。こうした攻撃は人類が引き起こし得る破滅、分裂、破壊の兆候でもある」と述べている(バチカンニュース4月7日)。
レオ14世の一連の批判に対し、トランプ氏は黙ってはおれないのだろう。同氏は14日夜(現地時間)、「誰か教皇レオ14世に、イランが過去2カ月間で少なくとも4万2000人の罪のない、完全に非武装のデモ参加者を殺害したことを伝えてくれないか?」と、自身のプラットフォームに書き込んでいる。イランのムッラー政権が自国国民に対して大量殺害を行ってきた事実を忘れたか、とレオ14世に問い掛けたわけだ。
米国出身同士の対立
ワシントンとバチカンの関係が今日、以前ほど円滑でないのは、トランプ大統領とその強引な政治スタイルだけが原因ではない。オバマ大統領時代にも緊張関係は存在していた。ベネディクト16世の在位(2005~13年)中には、その緊張はさらに高まった。同16世の反リベラルな政策は、当時ワシントンで勢力を誇っていた「ウォーク」派で不満を引き起こした。フランシスコ教皇の就任後も、例えばオバマ大統領によるシリア内戦への介入の脅迫などを巡って、緊張が高まった。しかし、今回の対立は、米大統領と米国出身のローマ教皇の間で生じている点で新しい。
(小川 敏)





