トップオピニオンメディアウォッチ普天間合意30年 「安全保障は国の専管事項」を無視する毎日社説 矛盾を指摘する産経

普天間合意30年 「安全保障は国の専管事項」を無視する毎日社説 矛盾を指摘する産経

オスプレイが並ぶ普天間基地
オスプレイが並ぶ普天間基地と間近に迫る市街地

 日米両政府が沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の全面返還に合意してから、30年が経過した。

 各紙がこれをテーマに社説を張る中、朝日と毎日が政府と地方との相克関係にスポットを当てた。

 12日付社説で朝日は「政府は県の反対を押して、名護市辺野古沖を埋め立てて滑走路をつくる現計画を進めている」と書き、毎日は「日米両政府に求められるのは、負担軽減を求める地元の声と誠実に向き合う姿勢である」と総括した。

 だが毎日が直截(ちょくせつ)に訴える地域住民の声を聞けとの耳当たりの良い言葉は、国の存亡を左右する安全保障を地域住民に委ねよと言っているに等しい。

 そもそも外交や安全保障は「国の専管事項」だ。

 国と地方公共団体との役割分担を示した地方自治法第1条には、国の「本来果たすべき役割」の一つとして「国際社会における国家としての存立にかかわる事務」と明記する。外交や安全保障に関する実務や政策が該当する。

 こうした矛盾をしっかり指摘したのは産経だった。

 産経は12日付主張「普天間合意30年 県は辺野古移設に協力を」で、「(辺野古移設問題は)国の外交安全保障政策に属する問題だ。地方自治体の県が覆そうとするのは間違っている。玉城デニー知事は反対を取り下げ、辺野古移設による早期の普天間返還を目指すべきである」ときっぱり書いた。

泥沼化喜ぶのは中国

 米軍の普天間飛行場の移設問題が泥沼化するのを喜ぶのは中国だ。

 米国はニクソン訪中以来、中国に対し国際社会になじませるエンゲージメント(関与)政策を基本としてきた。だが期待した民主化は果たせないばかりか、中国は軍事力増強に動き強権国家へと変貌を遂げた。中国は南シナ海の軍事基地化を図り、2022年には台湾周辺での軍事演習中に弾道ミサイル5発を沖縄県先島諸島周辺に落下させている。

 こうした安全保障環境の変化に対応するためには、充実した防衛力整備と同盟関係強化といったヘッジング(保険)政策が必須となる。その意味で辺野古移設問題は、対中政策と不可分の関係にある。

 そのヘッジ政策からすると、毎日はトンチンカンな主張をしている。

 毎日の同社説は、沖縄国際大の野添文彬教授(国際政治学)の発言を引用する。

 「沖縄に集中する兵力を日本全体やアジア・太平洋全体に分散させることは、沖縄の基地負担軽減と共に、抑止力の維持につながる」というのだ。

 だが、兵力分散のメリットは中国がミサイル性能の向上を図る中、兵力温存の効果は期待できるものの、効率的な抑止力維持につながるかどうかは甚だ疑問だ。

周辺国に核の刃存在

 さらに毎日は同社説で「米軍基地は有事には相手国からの攻撃対象となりうる。住民が不安に感じるのは当然だ。米国・イスラエルの攻撃に対し、イランは湾岸諸国の米軍基地などを報復攻撃した」と基地の存在そのものの危険性を説く。

 毎日は基地反対論者の常套(じょうとう)句である「有事に巻き込まれる」リスクを強調するが、核の脅しを突き付けながらウクライナ侵略戦争を続けるロシアや、核開発に余念がない北朝鮮、中距離核弾頭を多数持つ中国など周辺国に核の刃(やいば)が存在する中、米国の核の傘で守られている日本が同盟国から見放されるリスクを言わないのは均衡を欠く。

 なお朝日と毎日は、普天間の滑走路は約2700㍍だが、辺野古で計画されているのは約1800㍍のV字型滑走路2本だという問題を書いてはいる。だが、特定の航空機には短すぎる安全保障上の懸念に両紙ともども触れていないのは寂しい限りだ。

(池永達夫)

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