
二番煎じの記事掲載
沖縄県名護市の辺野古沖で同志社国際高校の生徒が乗った小型船2隻が転覆し女子生徒が死亡した事故で、朝日が5日付社会面に「家族思いの子が どうして 辺野古沖転覆 心境語るネット投稿」との見出し記事を載せた。
ネット投稿とは亡くなった同校2年の武石知華さんの遺族がネット投稿サイト「note(ノート)」に「辺野古ボート転覆事故遺族メモ」の名前で心境を発信しているもので、本紙と産経がデジタル版2日付で、紙面では産経が3日付1面で大きく報じている。遺族は「情報が錯綜する初報段階で『抗議活動のため乗船していた』と一部で報道され、誤った認識が拡散されたことにも苦しめられた」と心痛を綴(つづ)っていた。産経デジタル版には「記事につくコメントは見るにたえず、吐き気を覚えた」ともあった。
これを朝日は後追いするように掲載したのである。明らかに二番煎じだ。遺族側の話をほとんど報じてこなかった朝日がなぜ、今になって? それで訝(いぶか)しんで読んでみると、案の定、中身に驚かされた。何と遺族に対する謝罪記事だったからだ。
見出しに「謝罪」なし
朝日5日付は同サイトにある知華さんの写真を掲載し「(投稿は)悲しみとともに、学校や報道などへの不信感が記されている」と書く。紙面には前記の大見出しのほかに小見出しで「情報求めて発信」「旅程『異質すぎ』」とあり、投稿をほぼなぞっている。驚いたのはその関連扱いの「デジタル版の記事にも言及」との1段小見出し記事だ。
それによると、投稿は「今までに拡散された誤情報のうち、代表的なもの」の一つとして、朝日デジタル版の記事を取り上げていた。それは事故直後の3月16日正午すぎに配信したもので、「米軍普天間飛行場の移設工事に対する抗議活動のために乗船していたという」とあった。その後、乗船していたのは同志社国際高校の生徒たちで、平和学習の一環で辺野古を見学していたことが分かり、「抗議活動に参加した事実はなく、朝日新聞はまもなく記事を修正し、16日夜に記事中におわびを掲載した」としている。
だが、遺族は投稿で「記事は訂正されましたが、誤った認識が第一報で広まりました」と指摘したという。それで朝日は投稿者とメールでやりとりし、「高校での会見でご遺族の意向が伝えられた3月17日以降、亡くなった武石知華さんを匿名としてきましたが、投稿内容とやりとりをふまえ、実名で報じます」とし、記事の末尾でこう記した。
「朝日新聞デジタル版は当初、『抗議活動のため』乗船していたと報じました。記事はまもなく修正しましたが、事故発生当初の記事とSNSでの投稿により、事故に遭われた方やご家族、関係する方々に大変ご迷惑をおかけしました。おわびいたします。誤った内容が含まれたSNS投稿は削除しました」
これはどう読んでも誤報に対する謝罪記事だろう。それがなぜ、見出しにとらず、本文を読まない限り、読者には知り得ないような「謝罪隠し」紙面としたのか。まったく腑(ふ)に落ちない。やり方が狡猾(こうかつ)ではないか。投稿が朝日を名指ししなかったら黙殺するつもりだったのだろうか。
「平和丸」船長は匿名
女子生徒は実名で報じられるようになったが、死なせた「平和丸」の船長は今もなぜか匿名である。これも腑に落ちない。ネット上では日本共産党沖縄県委員会北部地区委員会役員で2022年に今帰仁村(なきじんそん)議会議員選挙に立候補し落選した「諸喜田タケル」と名指しされているが、共産党はだんまりを決め込んでいる。同党は転覆船を運航する「ヘリ基地反対協議会」の構成団体だ(産経4日付)。朝日は事故一報の3月17日付では団体名を書かず、同18日付では「市民団体」とするだけだった。その後は記しているが、これは団体隠しではなかったのか。辺野古事故を巡る朝日の「闇」は共産党と同様に限りなく深い。
(増 記代司)






