
活動家サイドの報道
かつて国の天然記念物ジュゴンの死骸が沖縄県今帰仁村(なきじんそん)の港で発見された際、沖縄タイムスは米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の「運搬船犯人説」を書き立て、「ジュゴンが死んだ なぜ守れなかったのか」と題する社説で「政府は徹底調査し、明らかにしなければならない」と唱えた(2019年3月20日付)。朝日の論説委員の前田史郎氏も沖縄近海でジュゴンの生息情報がないのは「(辺野古の)基地建設が関係しているともいわれる」と論じ、防衛省に「工事の中断も念頭に本格調査すべき」と迫った(23年6月3日付社説)。
ところが、辺野古沖で小型船2隻が転覆し修学旅行中の同志社国際高校の女子生徒ら2人が亡くなった海難事故(3月16日)では歯切れが悪い。沖縄タイムスは「現場の天候は晴れ。出航時の波は穏やかだったとの証言がある」「亡くなった船長は20年近く辺野古で船を出してきたという」などと転覆船をかばうかのように書く(17日付社説「原因究明と心のケアを」)。朝日は社説も出さないつれなさだ(29日現在)。それは事故船舶が「ヘリ基地反対協議会」の抗議船だったからに違いない。
朝日は18日付で「『岩礁避け沖へ 大波で転覆』乗組員証言」と抗議活動家サイドの話を伝え、2隻が海上運送法に基づく事業登録がなされていなかったことが判明すると(産経18日付)、「抗議船『事業』に当たるか ボランティア 交代で船長担う」(20日付)と活動家サイドの見出しを立てた。真相究明を迫る姿勢は微塵(みじん)も感じられない。
一方、産経は「危険出航 ずさん管理」(23日付)、「事故当日、海荒れ工事中止 移設作業船、波高基準超え」(24日付)と報じ、「(大型船でも)作業に支障を来すようなうねりの中、小さな船が出航していたことが信じられない」との移設工事側の話を伝える。
一般論に話すり替え
同志社国際高の保護者説明会の記事も対照的だった。朝日25日付の「生徒の安全確保 どこまで検討」は学校側の説明を報じるのみ。その上、「研修旅行や課外活動の際、子どもたちが危険にさらされた事例は今回の事故に限らない」と危機管理の一般論に話をすり替えている。
産経は27日付「牧師の船長 なぜ信頼 保護者指弾『プロでない』」で、学校説明会での保護者側の声を詳報した。今回の事故で死亡した抗議船の船長、金井創(はじめ)氏と学校の関係性について質問が集中したとし「プロでなくボランティアの船、プログラムの設計自体に欠陥がある」「(抗議船の)名前からして左翼団体だと明らか。教育と政治は分けてしかるべきだ」などと憤慨したと伝える。
琉球新報は「高校への誹謗中傷 理由なき攻撃許されない」と題する社説(22日付)で、「SNSなどで『高校生が抗議活動に参加していた』など誤った認識を基にした誹謗中傷が向けられている。理由のない偏った攻撃は許されない」と高飛車に言うが、果たしてそうか。産経28日付は「辺野古抗議団体 生徒に座り込み『お願い』 高校、過去のしおりに掲載」と、その証拠写真を載せている。
人命よりジュゴン?
本紙ネット(25日)には金井氏が牧師を務めていた日本基督教団佐敷教会(南城市)の週報に米軍の移設工事に対する「座り込み抗議活動」の日数が報告されているとし、その週報を掲載。ラジオパーソナリティーで元那覇西高校PTA会長の手登根(てどこん)安則氏は本紙25日付「沖縄のページ」で転覆事故の背景に「反戦平和は免罪符」「反基地無罪」との独善的思考があると指摘している(詳細は本紙ネットで読んでいただきたい)。
地元紙も朝日もジュゴンの死には「なぜ守れなかったのか」と叫んでも、女子高校生には決してそう言わない。冒頭の朝日社説のタイトルには「守るべき大切なものは」とあったが、それはジュゴンであっても人命ではないということか。恐るべき左派紙の「反基地無罪」である。
(増 記代司)






