トップオピニオンメディアウォッチ経済安全保障の観点から造船業復興再生の可能性を探った東洋経済

経済安全保障の観点から造船業復興再生の可能性を探った東洋経済

建造中の船舶(三菱重工長崎造船所)
建造中の船舶(三菱重工長崎造船所)

世界シェア10%未満

 かつて造船大国であった日本。1956年当時、高度成長時代に突入したわが国の造船業は建造量で英国を抜き、世界シェアの半分以上を占めるほどだった。しかしながら、70年代に入るとオイルショックとともに次第に構造不況型の業種として衰退。代わって2000年ごろから中国、韓国が台頭し現在、わが国の造船業の世界シェアは10%未満に落ち込んでいる。

 ただ、「海を制するものは世界を制す」という言葉があるように、世界の物流の一角を担う海運業と共に造船業の役割は極めて大きい。日本のような島国で海外貿易が主軸の国であれば、なおさら造船業は必要不可欠のはず。折しも世界情勢が混迷を深める中、高市政権は経済安全保障の観点から造船業の復興強化を重要事項と位置付けている。

内需の3割超、中国へ

 そうした中で、週刊東洋経済(3月7日号)が造船業に焦点を当て特集を組んだ。「造船復興 国策大転換の行方」と題し、その動向と可能性を探っている。

 そもそも政府が造船業復興を国策として決定した背景の一つには、東アジアにおける中国の覇権主義台頭と米国の意向があるという。同誌は次のように指摘する。

 「トランプ氏の頭の中には『船こそパワーだ』という概念があり、トランプ政権高官は『アメリカの造船所には技術が残っていない』『日本と韓国に協力してほしい』と考えていた。米大統領選挙終盤の時期から水面下で、自民党幹部、経済産業省高官らと造船復興の話を詰めてきた」(峯村健司・キヤノングローバル戦略研究所上席研究員)という。

 東シナ海および南シナ海において覇権を握る中国が世界の物流を握ろうとしている今日、その根幹となる造船業においても中国が世界シェアの半分以上を占めている実情を見れば、米国が危機感を抱くのは当然のこと。

 そうした米国の思惑に合わせて高市政権は矢継ぎ早に手を打っていった。2025年10月、石破政権に代わって就任した高市早苗首相が打ち出した17の重点投資分野に造船を盛り込み、同年末には造船復興再生に向けたロードマップを策定。今後10年間で国内建造量を倍増(24年度900万総㌧から35年には1800万総㌧)させるとしている。

 さらに同誌は現在の日本の造船業の現状を次のように指摘する。「日本の造船業は内需すら賄えていない。日本船主の建造発注は年1200万総㌧(24年)に対して、国内建造量は900万総㌧。発注の3割超が中国へ流れる。今治造船の檜垣社長は『日本の船主のリプレース(更新)需要にすら対応できていない』」と綴(つづ)り、その上で「貿易の99%以上を海上輸送に頼る日本が、自国で船を造れなくなることは何を意味するのか」とこれまでの造船業に対する政府の無策ぶりを指摘する。

 確かに、高市政権が造船復興の手だてを次々と打ち出し、海洋国家日本の面目を保とうとしている姿を見れば見るほど、その前の岸田・石破政権の無策ぶりが感じられる。

設計集中する体制も

 特集では日本船主協会の長澤仁志会長も登場し、「日本の貿易量の99・6%は海運に依存している。仮に日本の造船業が消滅すれば、中国に船を発注せざるをえなくなる。地政学リスクが高まった際どうするのか。強い危機感を持っている」と警鐘を鳴らし、さらに「中国では、国営設計会社の上海船舶研究設計院(SDARI)が優秀な人材を集めて集中的に設計を行っている。同様の『オールジャパン』の設計会社をつくり、各造船所はその図面に基づき建造するような体制も検討すべきだ」と提言する。

 構造不況型の業種として位置付けられてきた造船業だが、国民生活という視点から見れば海運・造船業は死活に関わる産業であることは間違いない。半導体と同様に経済安全保障の面からも重要な位置付けとして取り組んでいかなければならないことが分かる。個人や企業の利益を追求する企画が多い経済誌ではあるが、今回の特集は日本国家の将来を真面目に取り上げた企画ではなかったかと思われた。

(湯朝 肇)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »