前稿で取り上げた弁護士ジャーナリストの楊井人文「法廷に響いた怒声 違和感の正体」(「Hanada」4月号)で、一次情報を得て評価を下すことの重要性を確認させる部分があった。
楊井は山上徹也に対する奈良地裁の「判決後、山上単独犯に疑問を持つグループが記者会見を行い、判決を厳しく批判した」と紹介した。その上で、同誌3月号が掲載した軍事・有事医療ジャーナリストの照井資規の論考「山上銃と黒色火薬 本当に単独犯行なのか」が指摘した内容と、公判で検察側が提示した内容に食い違いがあることを指摘した。楊井の論考は、安倍氏暗殺事件の「裁判傍聴記④」として書かれたものだから、彼は検察側が提示した証拠を見ている。
銃や火薬についての知識を持つ照井は、素人が黒色火薬を自作するのは困難なだけでなく「非常に敏感な物質」だから、山上がそのような危険な物質を手製の散弾銃の製作のために長期間扱って「無傷」ということは「どう考えても不自然」。だから、製品としての火薬を入手したとしか考えられない、とした。
こう論理展開した上で、火薬を購入あるいは譲り受けるには銃の所持許可が必要だが、山上は猟銃免許も銃の所持許可も持っていない、従って「第三者の関与を前提にしなければ説明がつかない」と結論付けている。
これに対し楊井は、照井が論考で提示した「手製散弾銃の構造イラスト」について、公判で「科捜研職員がスライドで説明した手製銃の構造といくつもの食い違いがある(山上の銃では豆電球や電池は用いられていない等)」と述べている。
また、押収された山上手製銃6丁の発射実験の結果、「均一な結果」が出たことは工業製品の黒色火薬だったとしか考えられない、と疑念を示した。この点についても楊井は「法廷で示された発射実験ごとの弾速測定値は、筆者が見た限り、かなりばらつきがあった(報道されたのは平均値で、個別の測定値ではない)」としている。
素人が照井の論考を読むと、「山上単独犯」に疑問を持っても不思議でない。山上単独犯の疑問点を検証することはジャーナリストとして必要なことだが、報道という不確かな情報を基にした論理展開は説得力に欠ける。「Hanada」次号で、楊井の論考に対する照井の反論を期待する。
(被害者の安倍氏以外は敬称略)






