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安倍氏暗殺事件の再分析 判決は民主主義への影響欠く

 安倍晋三元首相暗殺事件裁判は、奈良地裁から無期懲役の判決を下された被告山上徹也が控訴した。一方、東京高裁から解散命令を受けた世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)が特別抗告した。

 二つの事件に対するマスコミ、世論、そして政治による“熱狂”は以前ほどではないが、新聞、テレビ(オールドメディア)がその熱狂を冷静に分析するにはまだ至っていない。そんな中、安倍氏暗殺事件裁判を客観的に論じた三つの論考が月刊誌4月号に掲載されている。

 この欄では、安倍氏事件と家庭連合に対する解散命令について、何度か取り上げてきたが、二つの事件についてのオールドメディア報道に変化を促すため、今回も前述した3本を取り上げる。著述家・加藤文宏の「崩れた『宗教二世の悲劇』」(「正論」4月号)、弁護士ジャーナリスト・楊井人文「法廷に響いた怒声 違和感の正体」、ブロガー・藤原かずえ「テロに貢献した日本のマスメディア」(以上、「Hanada」4月号)だ。

 加藤と藤原の論考に共通する視点は、安倍氏に対する銃撃をきっかけに、メディアや世論が沸き立ち、それに政治が抗(あらが)えずに解散命令請求に至ったプロセスの異常さだ。その点については、「世界日報」が何度も指摘しているので、詳細は省くが、加藤の次の指摘は重要だ。

 「テロが醸し出した反カルト感情の熱狂に政府が屈したことで、将来の模倣犯に対して成功体験を与えてしまったことは、『暴力は社会変革の有効な手段である』と最悪のメッセージを残してしまった。法治国家において、暴力が言論や正規の手続きを凌駕したのである」

 藤原は、テロ被害者の安倍氏に落ち度があるかのような印象操作を行う一方で、加害者の山上に寄り添う報道を展開してきたマスメディアの責任を次のように指摘した。

 「まさに、マスメディアは被告の御用メディアとなり、劇場型犯罪としてのテロリズムにインセンティヴを与えてしまったのです」

 2誌とも東京高裁の決定が下る前に店頭に並んだことから、どの論考もそこには触れていないが、結局、熱狂は政治にとどまらず、“法の番人”をも突き動かし、東京地裁に続いて高裁も解散を命じる決定を下したのである。

 安倍氏事件当時の自民党総裁で首相だった岸田文雄が同党と家庭連合の「関係断絶」宣言を行ったことについて、加藤は「関係断絶宣言から解散命令請求に至る一連の動きは、山上被告の行動が政治を動かした結果であり、テロの成果となった」と述べた。文部科学省による請求後の裁判所決定を見ると、司法もテロに成果を与え、暴力は社会変革の有効な手段になるとのメッセージを発したのである。

 東京高裁の決定に対して、教団が特別抗告したことで、最終判断は「憲法の番人」に委ねられることになった。ここに至って、教団の解散を煽(あお)ってきたはずの朝日新聞が「旧統一教会への解散命令に至る道が、銃声によって開かれた事実は重い」(3月14日付『多事奏論』、オピニオン編集部記者・田玉恵美)と言いだしたのは注目に値するが、なぜもっと早くその視点を打ち出せなかったのか。

藤原は「テロの味方」をしたマスメディアのもう一つの問題点を指摘した。「犯行が民主主義の根幹である選挙で行われたという視点からの議論も、マスメディア報道から全く抜け落ちています」と。これについては楊井も、山上被告に無期懲役判決を言い渡した奈良地裁も同じだと述べている。

 「元内閣総理大臣であった『現職の国会議員』が『選挙活動中に』殺害されたという、この事件を語るうえで欠かせない重要な事実が抜けていた。検察の論告がそうだったように、民主主義や政治・社会に与えた影響への言及も」なく、「『一人の人間が殺された事件』として処理しようとしたように見えた」と述べた。

論壇には、安倍氏事件について二つの表記がある。「暗殺事件」と「銃撃事件」だ。筆者もどちらがより適切か迷っていた。暗殺には「秘密裏」の意味が強く、銃撃は「公然」と行われるニュアンスがある。政治的な動機で要人を殺害する意味からすると、暗殺事件が適切なのだろう。内閣総理大臣として在職日数が歴代最長だった政治家の暗殺事件を軽く扱うメディア。その一方で、幹部が刑事事件を起こしたことのない教団信者による不適切行為を実態以上に膨らませて報じたメディアにより、処罰

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