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「カイロス」3度目も失敗で挑戦継続を訴えるも悲壮感漂う新聞社説

カイロス打ち上げ失敗
2026年3月5日、宇宙新興企業スペースワン(東京)は小型ロケット「カイロス」3号機を和歌山県から打ち上げたが、発射約69秒後に安全システムが異常を検知し、飛行中断(自爆)措置が取られ、3連続の失敗となった

社説保守系2紙だけ

「三度目の正直。今度こそ成功を」と期待されたロケット打ち上げは、またも失敗に終わった――。

 宇宙開発ベンチャーのスペースワン(東京)の、小型ロケット「カイロス」3号機の打ち上げである。

 5日、自社の発射場「スペースポート紀伊」(和歌山県串本町)から打ち上げられた「カイロス」3号機は、約70秒後に自律飛行安全システムが作動して飛行中断措置が取られ、破壊後は南の海域に落下した。

 打ち上げ失敗を受け、記者会見した豊田正和社長は、「皆さまに心よりおわび申し上げる」と陳謝。その上で、「結果を踏まえ必要な改善を行い、宇宙輸送のサービスの実現に向け着実に前進させたい」と述べ、再挑戦に意欲を示した。

 これを受けた新聞社説はさすがに少なく、これまでに産経と日経の2紙のみ。2024年12月の2度目の失敗時には、読売、産経、日経、朝日の4紙が社説を掲載。失敗を恐れず鼓舞する論評が目立ったが、3度目も失敗となるとやはり鼓舞だけでは済まず、むしろ成功は期すものの、悲壮感が漂う論調となるのも仕方ないだろう。

産経「技術的に未熟」

 6日付産経「開発体制の立て直し急げ」、7日付日経「民間ロケット開発を諦めるな」が、その見出しである。

 まず産経だが、同紙はロケット開発初期にトラブルはつきものだが、「3回連続の失敗は深刻である」と指摘。対策は万全だとして打ち上げに臨んだが、「技術的に未熟だったと言わざるを得ない」と断じた。

 そのため、直接の原因究明や再発防止だけでなく、開発や検査の体制、組織の風土、マネジメントまで踏み込んだ検証が求められよう、と注文を突き付けると同時に、会見で「ノウハウや経験を蓄積し前進できた。失敗とは考えていない」と述べた豊田社長に対して、「結果を謙虚に受け止めるべきだろう」と戒めた。

 失敗は成功の基であり、その点で豊田社長の姿勢は前向きでいいのだが、3度目も失敗という現実に深い反省も必要ということなのだろう。同紙の言い分も肯(うなず)ける。

 産経は、スペースワンは世界的に需要が増加している小型衛星の打ち上げビジネスへの参入を目指している、として同社の狙いを評価しているだけに、前述の厳しい叱責も「2020年代に年間20機を打ち上げる目標の達成は厳しくなったが、諦めずに開発を続けてもらいたい」という熱い期待があってのことか。

 同紙がこう記すのも、大きな理由がある。政府はロケット開発について、成長戦略の一環として民間の育成を重視しているものの、「30年代前半までに官民で年間30機の打ち上げが目標だが、国の大型機のH3や小型機のイプシロンも失敗や事故が相次ぎ憂慮すべき状況にある」からだ。

安全保障にリスクも

 日経もこの点は同様で、「観測や通信、測位に使う衛星は国家のインフラだ。宇宙に送る手段を他国に依存すれば宇宙ビジネスの国際競争から取り残され、安全保障上のリスクも招く」とも強調する。

 25年はロケットの打ち上げ成功が世界で316回に達したが、このうち、米国が192回、中国が91回を数え、日本は3回にとどまった。

 日経は「日本が競争力を高めるうえで、国に加えて民間によるロケットの開発が避けて通れない」と指摘し、「打ち上げ数が極端に少ないなか、失敗からいち早く立ち直るスピード感が求められる。挑戦を諦めてはならない」と強調する。同感である。

 スペースワンが会見で、機体や飛行経路に問題はなく、異常検知時に機体を破壊し飛行を中止する新安全システムに不具合があった可能性があると説明したことについて、日経は「難度の高いシステムを組み込む機体の製造に、同社や日本の技術力が伴っていたのかを検証しなければならない」とした。成功すれば新システム採用も美談だが、これが失敗による現実ということか。

(床井明男)

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