トップオピニオンメディアウォッチ袴田巌氏「冤罪事件」と似通った東京高裁の旧統一教会への「解散命令」

袴田巌氏「冤罪事件」と似通った東京高裁の旧統一教会への「解散命令」

東京高等裁判所・地方・簡易・家庭裁判所
東京高等裁判所・地方・簡易・家庭裁判所

決定を垂れ流すだけ

 袴田巌氏の「冤罪事件」(2024年10月、無罪確定)と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への東京高裁の「解散命令」(3月4日)は似通ってはいまいか。前者は「証拠」を捏造(ねつぞう)されて死刑判決を受け、後者は「証拠」が捏造された疑いを残したまま宗教法人にとって「死刑」に等しい解散命令を下された。

 袴田事件ではメディアは当局発表を垂れ流し、国民はそれを鵜呑(うの)みにして袴田氏を「極悪人」と信じた。教団も「悪徳教団」と断じられ、国民もそう受け止めているようだ。「解散命令」を各紙は5日付1面トップで「悪徳献金 継続を認定」(産経)「全面救済 焦点に」(読売)「教団を一蹴『被害続く』」(朝日)と報じ、社説では「全面的な被害救済実現を」(毎日)などと「被害救済」に焦点を当てている。

 だが、その「被害」なるものが理解しづらい。各紙は高裁決定を垂れ流すだけで、「被害」について検証した新聞が一紙も存在しなかったからだ。高裁決定要旨(朝日5日付)を読んでも「被害」は推測の域を出ない。これで「死刑判決」とは空恐ろしい。

 この疑念を元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏は本紙6日付でずばり解いている。「(解散決定の)一番の問題は、これが憲法第32条および第82条に基づく公開裁判を受ける権利を与えず、非公開の非訟事件として扱い、解散命令の決定をなしたこと」と指摘し、さらにこう述べている。

 「(解散命令の請求は)被害者と名乗る者の被害報告を集めただけで、その報告の被害が事実として存在するものなのか、さらにはそれは主観的には被害といえるとしても法的に不法行為と認定できるものなのか、そういうことを一切検証しないで、ただの文科省の集めた被害者と名乗る者の被害報告だけでもって非公開の非訟事件として扱い、その上で解散命令の決定となったものです」

偽装疑い濃い「被害」

 その「被害者と名乗る者の被害報告」は誰が用意したのか。22年10月に岸田文雄首相(当時)は「民法は含まない」とされていた宗教法人の解散請求要件を突如、「含む」と解釈変更し、それを受け文科省は「裁判所に請求を認めてもらうには、分厚い証拠」が必要だとして「新たな材料集め」に狂奔し、「民事訴訟になっていない事例も含めて…『100人以上からヒアリングを』。政府関係者によると、そうした目安のもと聞き取りが行われた」と朝日が“証言”している(24年7月9日付「深流4 安倍氏銃撃から2年・上『分厚い証拠を』走った省庁」)。そのヒアリングは教団と民事訴訟を争う「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の情報をそっくりなぞった。「分厚い証拠」といっても所詮(しょせん)、後付けにすぎない。

 その全国弁連の「被害」は偽装された疑いが濃い。本紙は「全国弁連の霊感商法『被害』偽装」(2月22日付より3回連載)で、「商品別」を隠して金額・件数を誇張しているばかりか「献金、借入」までも被害に計上していた実態を明らかにしている。それが事実なら捏造と言うほかない。

 袴田氏の場合、被害者関連の味噌(みそ)タンクから犯行1年後に発見された「衣服の証拠」が捏造と判断され無罪となった。刑事訴訟では事実の認定は証拠によらなければならないとする「証拠裁判主義」が徹底されているからだ。裁判官出身の弁護士は「法廷で取り調べた証拠以外の情報(例えば、マスコミの報道など)をもとに事実を認定することも許されません」と明言する。だから従来、解散請求は刑事事件を要件としたのだ。

真実を追求せぬ各紙

 袴田氏の無罪には58年を要した。教団への解散請求では政府関係者が「30年後の教科書に『ここから宗教弾圧が始まった』と書かれるかもしれない大きな判断。汗が出て眠れない夜が続いた」と告白している(朝日・前掲)。証拠が明確なら不安障害に陥ることもあるまい。真実を追求する新聞がないのはオールドメディアの終焉(しゅうえん)を思わせる。

(増 記代司)

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