
現実的な安保政策を
8日の総選挙は、大勝した自民党と大敗を喫した中道改革連合で明暗を分けた。
さっそく産経は9日付主張で「(信任を受けた)高市政権がまず取り組むべきは、日本の独立と繁栄の基盤である安全保障の追求」だとし「反日的で核武装した専制国家の中国、ロシア、北朝鮮の脅威は高まっている。(中略)高市政権は戦後政治の大転換を図り、日本と国民を守り抜く現実的な政策を推進すべきだ」と書いた。
反戦平和を唱えつつ、平和を守るための防衛力整備には執拗(しつよう)に反対する「似非(えせ)平和主義」に翻弄(ほんろう)されてきた戦後にリアリズム的転換を図れというのだ。「似非平和主義」は一見、平和を追求しているようで、現実は抑止力が弱まりかえって戦争を招きかねないのだ。
一方、朝日は9日付社説で「首相は『国論を二分するような政策』の実現に突き進むとみられる」と予想。そして「選挙戦の勝利は、有権者の『白紙委任』を意味しない」と釘(くぎ)を刺した上で、「『数の力』で強引に進めれば、社会の分断を助長するだけだ」と牽制(けんせい)した。日経と東京も、同様の「白紙委任論」を展開した。
だが「自民圧勝は有権者の白紙委任を意味しない」というのは、当たり前のことだ。当たり前のことを前面に出して、読者を煙(けむ)に巻いていることが問題だ。それ以上に大事なのは、なぜ高市早苗首相が率いる自民を有権者が推したのかということだろう。その期待に応えるのは当選者の責任だ。
野党再編進む可能性
さて自民の地滑り的大勝を許した中道に関し産経は、「有権者から『選挙互助会』だと見透かされたのは当然だろう」とバッサリ切った上で「中道だけでなく共産党やれいわ新選組も有権者から有力な選択肢とはみなされなかった。左派・リベラル勢力が野党をリードする時代は終わったとみるべきだ」と総括した。また読売は9日付社説で「今回の中道改革の惨敗で、今後、他党を巻き込んだ野党再編が進む可能性もあるのではないか」との大局観を披歴した。
結局、何をしたいのか分からない中道に対し有権者の鉄槌(てっつい)が下されたのだ。中道は共同代表の首をすげ替えるだけで再生することはないだろう。立憲民主党系は比例代表で当選を果たした公明党系に対し不平たらたらだ。自民に三くだり半を下した公明は、今度は立民から三くだり半を下される可能性だってあり得る。内部に不満の種火が燃え盛っていれば、いずれ大火となり残るのは灰だけだ。政治家に必要なのはまず志であって、権力への野心だけでは朽ち果てるだけだ。
消費税減税か維持か
なお、興味を引いたのは消費税減税に関しての論調だ。
産経は「自民は公約で、2年間に限って飲食料品を消費税の対象としない減税策に踏み込んだ。国民との約束は、政権の信頼にかかわる」として、責任ある財源確保の制度設計に高市首相はリーダーシップを発揮せよと背中を押した。
一方、読売と日経はこれとは真逆で消費税維持を社論とした。
読売は「首相は、改めるべきものと、守るべきものを間違ってはならない。基幹財源である消費税を維持するのは当然である」と説き、日経は9日付社説で「食料品の消費税率ゼロは社会保障の安定財源に年間で5兆円の穴があくが、確保策は見えない。消費税減税がいま必要なのだろうか」と疑問符を付けた上で「消費税は維持が当然だ」との結論を下す。日経が心配するのは市場の不信任だ。同社説で「市場では財政悪化への懸念から長期金利上昇の傾向が続く。首相が選挙後も優先課題に掲げる『責任ある積極財政』は本当に『責任』を伴っていると言えるのか。減税ポピュリズムに陥れば市場の信認を失いかねない」と消費税減税策に懸念を表明する。
高市首相は消費税減税に関し「国民会議に諮って夏までには取りまとめる」意向を表明したが、落としどころをどう探っていくのか注目したい。
(池永達夫)






