トップオピニオンメディアウォッチトランプ米大統領の「ドンロー主義」の背景と今後を読み解くエコノミスト

トランプ米大統領の「ドンロー主義」の背景と今後を読み解くエコノミスト

フロリダ州マール・アー・ラゴ・クラブで行われた記者会見で演説するドナルド・トランプ米大統領(2026年1月3日/UPI)
フロリダ州マール・アー・ラゴ・クラブで行われた記者会見で演説するドナルド・トランプ米大統領(2026年1月3日/UPI)

米の伝統的外交手法

 2025年1月、トランプ米大統領2期目の就任が“トランプ劇場”の幕開けというならば、今年1月の電撃的なベネズエラ攻撃は第2幕の始まりともいうべきものだろう。さらにグリーンランド領有に関してはヨーロッパ各国で大きな物議を醸している。昨年のイスラエル・ガザ地区の和平協議、ウクライナ・ロシア戦争の停戦介入から中国をはじめとする関係各国への関税圧力など、経済力・軍事力を背景に強権的行使が見受けられるが、世界は今年もまたトランプ大統領に振り回される一年になりそうである。

 こうしたトランプ大統領の威圧的な介入(軍事を含めて)に対して週刊エコノミストは、新年に入り2週にわたり二つの記事を掲載し、同大統領の行動原理を分析している。その一つ目は1月13・20日合併号でエコノミスト・リポートとして「トランプ版モンロー主義鮮明」と題する記事。そして、もう一つが1月27日号で「ベネズエラ攻撃『ドンロー主義』で中南米揺さぶり」と題するもの。

 どちらも国際問題評論家の丸山浩行氏の記事だが、トランプ大統領の対外政策は、米国の伝統的な外交手法である「モンロー主義」によるものであることを強調。中でも合併号では、トランプ大統領が昨年12月5日に発表した「国家安全保障戦略」(NSS)を引き合いに出し、「(米国としては)西半球の米単独支配を認めさせる見返りに、中国のインド太平洋、ロシアの欧州覇権を事実上、黙認することも示唆する」と丸山氏は結論付ける。

国家の威信を回復へ

 そもそもモンロー主義とは、米国5代大統領のジェームズ・モンロー氏が1823年に米国議会の年次教書演説の中で発表したもので、モンロー・ドクトリンとも呼ばれている。モンロー主義といえば米国の孤立主義、他国への内政不干渉と受け止められがちだが、決してそうではなく、むしろドクトリンの中にはヨーロッパ諸国の政治への不干渉、ヨーロッパが持つ既存植民地への不干渉の代わりに、西半球いわゆる北米・南米大陸の国々に対してヨーロッパからの干渉には断固拒否するという強い姿勢が打ち出されていた。

 モンロー主義はその後、マッキンリー大統領(第25代)、セオドア・ルーズベルト大統領(第26代)に引き継がれ、そして現在、ドナルド・トランプ大統領(第47代)が「アメMAGA」をキャッフレーズに「ドンロー主義」を掲げ大鉈(おおなた)を振るっているという見方である。

 エコノミストは、「マッキンリー大統領は高い関税をかけて米国の製造業を守り、工業国化に成功した。ルーズベルト大統領は、『こん棒』外交で辣腕をふるった。2人はトランプ大統領の師匠なのだ」(1月27日号)と綴(つづ)り、トランプ大統領が過去の大統領が行った政策を真似(まね)て行うことで国家の威信を取り戻そうとしていると説く。

 確かに、米国から見てこれまでのマドゥロ・ベネズエラ大統領政権は看過できないものがあったのだろう。米国のベネズエラ攻撃は、ベネズエラが中国の支援を受けながら一帯一路に加担し、反米の先兵となっていることに加えて、南米全体が「米国の庭」ならぬ「中国の庭」に変わりゆく動きに一矢を報いる意味合いがあったと言える。

三極支配になる懸念

 ところで、米国が西半球に主眼を置いた場合、懸念材料となるのが西太平洋の勢力図である。米国が南北米大陸に固執すればするほど中国の西太平洋およびインド洋での覇権が強くなる。台湾有事の際にも米国は干渉しないこともあり得ると丸山氏は指摘する。

 「中国の台湾有事や南シナ海、東シナ海の武力による一方的な現状変更など地政学的な脅威をトランプ政権は軽視しているようだ」(同氏)と述べ、さらに「米中露による三極支配戦略に世界中が巻き込まれるリスクが一歩進むことになりそうだ」と警戒感をにじませる。

 もっとも、自国の主権存立や安全保障は自国で守るのが基本。他国の軍隊に守ってもらって安心と考える時代はもう過ぎ去った。平和は口で唱えるだけで実現する時代ではなくなっている状況下、国民が国防意識を持ち、しっかりとした国防体制を構築すること。そうした自覚と認識を持つことが何よりも重要だ。

(湯朝 肇)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »