トップオピニオンメディアウォッチ同じ“自己チュー”命名も「にわか新党」重視の新潮、「世襲」批判の文春

同じ“自己チュー”命名も「にわか新党」重視の新潮、「世襲」批判の文春

日本記者クラブ主催の党首討論会に臨む各党党首ら=26日午後、東京都千代田区
日本記者クラブ主催の党首討論会に臨む各党党首ら。左から共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表、中道改革連合の野田佳彦共同代表、高市早苗首相(自民党総裁)、日本維新の会の藤田文武共同代表、参政党の神谷宗幣代表、れいわ新選組の大石晃子共同代表=26日午後、東京都千代田区

“情報の蛸壺”に陥る

 衆院解散も突然なら、立憲民主党と公明党の新党旗揚げも突然だった。この二つの突然を、なぜかメディアは一方だけ、ことさらに取り上げて批判する。解散の方だ。公平、公正、不偏不党…、メディアの中立は言葉だけだ、ということはもう読者も視聴者も十分承知しているにしても、この偏向ぶりは選挙戦に一定の印象付けを行おうとしているとしか思えない。

 しかも、今は情報取得を主にSNSに頼っている人が多いから、ネットの特性上「確証バイアス」がかかって、似たような情報ばかりが提示され、いつの間にか“情報の蛸壺(たこつぼ)”にはまり込んでしまう。「井の中の蛙(かわず)、大海を知らず」状態になり、自分の接している情報が全てだと勘違いする。

 これに陥るのは読者、視聴者など一般人だけでなく、メディアに携わる者自身も嵌(はま)る落とし穴だ。そして、自分が穴の中にいることも、外に大海が広がっていることにも気付かない。

 週刊新潮(1月29日号)と週刊文春(同)が奇(く)しくも今回の解散を同じ「自己チュー」解散とネーミングしている。ただ、その内容が違う。新潮の「自己チュー高市『自民』」の見出しから高市早苗首相と自民党の自己中心箇所を探すのだが、どうも記事中にそれらしいものがない。むしろ見出しの後半「にわか新党『中道』」の「にわか」部分の方に紙数も割かれて詳しく書かれている。

 立憲民主党と公明党による「中道改革連合」。水と油ほどにも違い、これまでは「敵と味方」で戦っていた同士だ。それがあっさりと手を握った。「選挙互助会」とか「野合」とか言われ、当然「にわか」なのだが、むしろこっちの方がよほど「自己チュー」に映る。新潮がこっちを主体に記事をまとめたのも無理はない。

高市氏の“あら探し”

 一方、文春の「自己チュー」は「解散」でも「新党」でもない。高市首相の義理の息子、山本建福井県議の衆院選出馬のことだ。「高市氏が結婚したのは、浪人中の二〇〇四年のこと。お相手は、山本拓・元衆院議員(73)だ。当時、バツイチの山本氏には一男二女がいた」。その長男の建氏(41)が「今回、父の地盤・福井二区から自民党に公認申請した」のである。同誌は「総理の息子」の出馬に何かないだろうかと嗅ぎ回ったか、それを快く思わない人物から情報提供を受けたのだろう。

 すると「疑わしい逸話」が出てきた。高市氏の“あら探し”をしていた文春にとって飛びつくに十分だ。建氏が進めたバイオマス事業で、高市氏が内閣府特命大臣として主導して2007年6月に閣議決定したプラン「イノベーション25」にもバイオマスが含まれていたことから、これを「利益誘導を疑われてもしかたない」と結び付けたのだ。

 同プランの対象事業は多岐にわたっている。さすがに同誌がその結び付きを調べ上げるのは難しいし、「説明責任」を求めるといっても、これだけを取り上げるわけにもいかない。「世襲ビジネス」とか見出しを付けているが、世襲したのは拓氏から建氏へで、高市氏に「世襲」は当たらない。建氏は出馬を断念した。もう少し綿密な記事を出すべきだろう。

学会票の7割中道に

 「『創価学会票の7割が中道改革に乗る』自民戦慄シナリオ」の記事は注目される。与党も野党も「寝耳に水」だった立憲と公明による新党立ち上げは、選挙構図に激震をもたらした。単純化すれば、これまで自民党に行っていた票が新党に回ってしまうのだ。そうすると学会票に助けられていた自民党議員のうち「全国で二十五ほどの小選挙区で、逆転が起きる可能性」があると「政治部デスク」は同誌に語っている。

 ただし、これは各選挙区で「一万~二万票ある」と言われている学会票がそっくり新党に回った場合の話だ。それを「元自民党事務局長の久米晃氏」が「今回、(公明党支持母体の創価)学会は『反高市』で総力を挙げるはずです。創価学会票の七割近くが中道に乗るでしょう」と断言している。

 10割でなく7割とは、これまで各地元で培ってきた自民公明の「人間関係」が働くことを考慮したものだ。選挙区でこれまでの「敵」立憲系候補の名前を書けるとしたら、逆に宗教票は怖い、民主主義と相容(あいい)れるのかとの疑問も湧いてくる。

 いずれにしても次週の週刊誌の選挙情勢分析に注目したい。

(岩崎 哲)

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