
予算成立は口先だけ
解散総選挙である。考えてみれば、当たり前の話だろう。昨年7月の参院選で「日本の政治地図は劇的に変化した」と世界で報じられた。その変化前の石破茂内閣が9月にようやく退陣、自民党総裁選で高市早苗氏が下馬評を覆して勝利すると、公明党が与党から離脱。それを日本維新の会との新たな連立で乗り越え、高市氏は10月に日本初の女性宰相に就任し臨時国会も乗り切った。こんな劇的変化は戦後政治でも稀(まれ)だ。高市内閣は高支持率を維持している。民意は劇的に変わったのだ。
それにもかかわらず、国会は旧態依然のままだ。現在の衆議院は石破内閣への「審判」だった一昨年秋の総選挙の“残滓(ざんし)”にすぎない。だから早急に解散総選挙を行い、高市内閣への民意を問う。それが「憲政の常道」だろう。
ところが、新聞も旧態依然のままである。高市首相が解散を決断すると、朝日は1月12日付社説で「国民生活より党利党略」と解散批判の旗幟(きし)を鮮明にした。その根拠を「新年度予算案の年度内成立を難しくしてまで、選挙を急ぐ理由は何か」と予算成立が遅れて国民生活に影響を及ぼす懸念を挙げている。朝日が政府にそれほど協力的とは、つゆほども知らなかった。が、案の定、口先だけだった。
本音は高市内閣が「国会審議で野党の追及を受けてほころび」が出ることへの期待が挫(くじ)かれた不満にある。朝日は高市首相の高支持率を何とか落とそうと通常国会を前に身構えていたのだ。
「国会が始まれば、特に一問一答の予算委員会の場で、経済対策の実効性や、台湾有事をめぐる首相発言を引き金に悪化した日中関係への対応、官邸幹部による『核兵器保有論』への見解など、首相の答弁が問われる場面が続く。政策以外の問題もある。韓国で昨年末、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との密接な関係を示す内部文書の内容が報じられた」
それだけでなく「首相が代表を務める政党支部が政治資金規正法の定める上限を超えて企業献金を受け取っていた問題」などをあげつらい、「国会で説明責任を果たさないまま衆院を解散するなら、追及をかわすための『自己都合』と受け取られても仕方がない」と言い募っている。予算成立は頭の片隅にもないのだ。あるのは高市潰(つぶ)しだけ。見事なまでに、どこかの国家主席と思考回路が繋(つな)がっている。
民意尊重する気なし
毎日がこれに呼応し14日付社説で「国民置き去りの党利党略」と続いた。「与野党が急ごしらえで臨む選挙戦では、十分な政策論争も期待しづらい。どさくさ紛れに政権への『白紙委任』を得るつもりなら、有権者を愚弄(ぐろう)している」と首相を罵(ののし)っている。惚(ぼ)けたことをよくも言えたものだ。「衆院は常在戦場」だ。解散話は高市首相の登場時からあった。石破前首相は首相就任8日後に解散を発表している。読売の解散スクープ(10日付)を待たずとも毎日の政治記者は探っていたはずだ。
毎日は支離滅裂である。「どさくさ紛れに政権への『白紙委任』」とは、高市首相が高支持率を背景に与党圧勝を想定しているのだろう。仮にそうなら民意の表れにほかならない。それを「どさくさ紛れ」とか「白紙委任」とする方がよほど有権者を愚弄している。民意を尊重する気は微塵(みじん)もないようだ。
党利党略の新党結成
野党といえば、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を発足させた。もっとも両党は解党せず、新党は衆院選だけのもので選挙公約は後付けするという。これこそ「どさくさ紛れ」の党利党略ではないのか。産経はずばり「左派リベラルの互助会か」(16日付主張)と批判している。
ところが、朝毎は解散批判とは一転して穏やかに「政権の対抗軸示せるか」(朝日16日付社説)、「『結集軸』たり得る政策を」(毎日17日付社説)とエールを送っている。オールドメディアは旧態依然の「野党連合」しか念頭にない。その正体見たり、である。
(増 記代司)






