
産経「高い賃上げを」
3日付産経「高水準の賃上げで成長を/稼ぐ力向上への投資が必要だ」、4日付日経「質を欠く財政と成長から「インフレが最大の課題」と需要より供給力強化求めた新年日経社説脱却せよ」、毎日「閉塞感を打ち破る志こそ」、6日付本紙「『強い経済』へ確かな一歩を」、8日付読売「弱すぎる円は国力を毀損する/積極投資へ企業の精神変革せよ」――。
掲載各紙が掲げた新年の日本経済に関する社説見出しである(朝日、東京はなし)。
「強い経済」を目指す高市政権の登場もあり、「長期的な停滞から抜け出し、安定的な成長軌道に踏み出せるのか。転機を迎えた日本経済にとって重要な1年となる」としたのは、産経である。
産経は、高市政権が人工知能(AI)・半導体や造船といった17の戦略分野を指定し、官民連携で重点的に投資する成長戦略を進めようとしていることに、「経済的威圧を強める中国に対抗するためにも、官民が連携して日本企業の潜在力を引き出そうとする試みは重要だ」と評価し、同紙らしい視点を見せた。
また、米トランプ政権の高関税政策の影響を受けながらも、堅調な業績を上げている日本企業が少なくないことには、「底力を示したともいえるが、世界市場で戦うにはなお力不足だ」との見解を示し、「企業は現状に満足することなく、研究開発や設備投資に資金を振り向け、トランプ関税に備えた『守りの経営』から『攻めの経営』に転じてもらいたい」とした。同感である。
ただ、そういう同紙の結論は前述の見出しが示す通り、「実質賃金をプラスに引き上げるために何よりも求められるのは物価上昇を上回る賃上げ」。その通りだが、月並みな指摘に収まってしまった。
成長投資へ規制緩和
日経の「質を欠く…」は、高市政権への厳しい注文だ。日本経済は今、働き手が不足し、地政学的な要因から食料や原材料の供給が制約されるリスクが根強く、円安の進行は輸入物価の上昇に拍車を掛けることから、「こうした環境下で、政府が財政拡張を優先する政策運営を続け、日銀による金融正常化の決断を先送りさせればインフレの高進を避けられない」と懸念する。
インフレ下での成長戦略は「需要の追加ではなく、供給制約を解く改革でなければならない」「良質な成長戦略とは資本、労働、技術進歩という3つの要素から供給側に働きかけて持続的な経済成長を促す政策である」と説くのは、いかにも経済紙らしい。
高市政権が成長投資に17の戦略分野を示したことにも、「戦略分野こそ規制緩和や競争政策、労働市場改革といった供給面からの構造改革を通じて民間の活力を刺激しなければならない」と述べ、産経とは違いを見せた。
こうした指摘は同紙が「26年の日本経済で最大の課題はインフレへの対処」と見るからだが、問題は同紙が説く経済学の教科書的な対応で「強い経済」が実現できるのかどうかだ。
毎日は全体的に新味はなかったが、レアアース(希土類)確保に日本が加盟する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と欧州連合(EU)との連携など通商政策に注力すべきとした点は一理ある。
強さ回復で円安是正
読売は「日本経済が強さを取り戻せば、円安も是正されるはずだ」と指摘し、「企業が投資により収益力を高めて高い賃上げを実現すれば、長引く物価高で強まる閉塞(へいそく)感を打破することが期待できるだろう」、高市政権の重点分野での投資も「時宜にかなっている」と評価するが、その一方で財政健全化の努力も怠れないとも強調する。
高市政権の「責任ある積極財政」が現状、円安要因に受け取られているからで、同紙も「市場の信認を得ることは欠かせない」とし、そのために「(政府)債務の削減には時間を要する。だからこそ中長期的な健全化の道筋を明確に示す必要がある」とも指摘するのだが、これが高市政権が目指す「強い経済」実現への制約にならないのか疑問が残る。
(床井明男)






