
SNS批判する鼎談
今年も、いわゆる「オールドメディア」とSNSのどちらが有益か、といった二項対立の議論が続くのだろうか。
読売新聞4日付に載った「自・立・維 新春鼎談 下」の見出しは「SNS 公正選挙の妨げ」だった。語り合ったのは自民党の森山裕・前幹事長、日本維新の会の遠藤敬・国会対策委員長兼首相補佐官、そして立憲民主党の安住淳・幹事長だ。
お正月だから、鼎談(ていだん)を企画した新聞に気を使ったのかもしれないが、3人の話はSNSの負の面に終始した。例えば「発信された情報が真実かどうかを確認することが大事だが、そうなっていない」(森山氏)、「分断をあおり、人々の心から憎悪を引っ張り出し、政治のエネルギーにしてしまう傾向がSNSで強まった」(安住氏)などだ。既成政党の国会議員すべてが同じ認識に立っているとは思わないが、ベテラン議員がこの程度では、SNSを効果的に使う国民民主党や参政党などの新興政党の躍進をアシストしてしまうわけだ。
司会を務めた川嶋三恵子・政治部長は同じ面に掲載した「リアルな議論 もっと」で「SNSを通じて政治が若者にも身近になっているなら、大きな意味があるだろう」と一応フォローした。しかし、若者の新聞離れの一因に作為的な報道があることにも触れるべきだった。この点では、公共財の電波を使うテレビの方が中立性の逸脱、偏向報道の責任が重い。
日本で最大部数を誇る読売が新年早々から、政治家によるSNS批判を掲載するに至ったのは、部数激減に対する危機感の表れであろう。昨年7月の参院選挙で新興政党が躍進したことへの既存政党の焦りもうかがえる。鼎談には的を射た指摘もあったが、明らかに認識のずれを感じさせる発言もあった。
双方向性持つツール
「SNSはあくまで情報を発信するためのツールだ。世論だと思い込み、右往左往するのはよくない」(遠藤氏)。X(旧ツイッター)にしろ、ユーチューブにしろ、双方向性があり、情報収集のほか、発信者とのコミュニケーションによって情報リテラシーを高めることにも役立つのである。
米国が3日、ベネズエラの首都カラカスなどを急襲し反米左派のマドゥロ大統領を拘束、米国に移送した。当初、新聞・テレビはトランプ政権の軍事作戦を「国際法違反」とし、カラカスだけでなく世界で反米デモが起きていると報じたし、Xにもその動画がポストされた。しかし、真逆の情報も見られるのはSNSの利点だ。
「マドゥロは大統領なんかじゃない。選挙が不正だった。批判した人を投獄した」と語るベネズエラ人女性の動画、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでベネズエラ人6万5000人以上が歓喜する動画をはじめ、世界中でマドゥロ氏失脚を祝う様子がポストされた。中には偽動画も含まれているが、次々にアップされる情報とオールドメディア報道の双方を総合的に判断すれば、ベネズエラは民主主義が崩壊した独裁国家だと分かり、反米デモに対する評価はおのずと違ってくる。
5日には、昨年のノーベル平和賞受賞者でベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏が「ベネズエラ人はトランプ米大統領に感謝している」と語った共同の配信記事を、産経新聞社のニュースサイトsankei.comがアップすると、オールドメディアはこれをなぜ報道しないのか、とのポストが続出した。
情報リテラシー育む
どこの国の外交・軍事にも本音と建前があるが、大前提は国益優先だ。米国の軍事作戦は麻薬カルテルと手を結ぶマドゥロ氏排除と民主主義の回復だけが狙いでなく、石油を中心にした権益確保もあろう。それも含め、国際法とのバランスをどう考えるのか。オールドメディアが十分役割を果たしているとは思えない状況で、動画は見る人間の感情を刺激するから注意を払いつつも、SNSはわれわれの情報リテラシーを鍛える効果をもたらしていることは指摘する必要がある。
(森田清策)






