
中国のお先棒を担ぐ
高市早苗首相の「存立危機事態」発言をきっかけに中国がさまざまな嫌がらせをしている。これを伝える日本のメディアは相変わらず「日本のせいで中国を怒らせ、そのせいでこんなに困っている」式の報道を続けている。悪いのは高市発言で、中国の言うように「撤回して謝罪しろ」と言うかの如(ごと)くだ。一体どこの国のメディアなのか。
勘違いしてならないのは、高市首相はこれまでの政府方針を変えたわけではない。難癖を付け一方的に関係を悪化させているのは中国の方だということだ。
週刊新潮(12月25日号)「ヤクザな中国を暴く」の記事で「防衛研究所の地域研究部主任研究官・杉浦康之氏」は、これは中国の「世論戦・心理戦・法律戦の“三戦”」だと指摘する。中国は事前通告したし、法や取り決めを守った訓練を行ったとの言い訳を世界に振りまいているが、その一方でしっかりと軍事力を見せつけ、しかもロシア軍機との共同飛行を行って日本近海で戦闘機や爆撃機を飛ばし、それも決まりに則(のっと)った訓練だと世界に訴えているのだ。
これを見た定見のない国民はどう思うか。中国の世論戦に嵌(はま)ってしまわないとも限らない。しかも始末の悪いことに、そのお先棒(さきぼう)を担ぐのが偏向した新聞・テレビなど日本のメディアだということ。「元海将で金沢工業大学大学院の伊藤俊幸教授」は「中国側は認知戦も仕掛けてきているわけだから、(略)“怖い、怖い”なんてマスコミが煽り立てては、中国の思う壺です」と警告する。
認知戦とはテレビやインターネット等を通じた情報戦で、偽情報の流布も含め、情報主導権を取ることで相手の思考を混乱させ、情報分析や意思決定を誤らせて自らに有利な状況をつくり出す争いとされ、伝統的な陸軍、海軍、空軍、核戦力、そして宇宙・サイバー戦に続く「6番目の戦場」となる可能性が指摘されているものだ。心理戦、情報戦と言っても間違いない。
“利敵報道”の特集を
日本には中国と違って言論の自由がある。利敵行為ともとれそうな報道ですら自由に流すことができる国だ。その意味で“中国の肩を持つ”メディアや報道があってもいいわけだが、国の安全、つまり国民の安全を脅かすことを結果的に許すような「自由」まではない。特に今回のような場合、週刊誌はフェイク情報を含めた“利敵報道”の特集を出すくらいの企画を出してほしいものだ。
さて、なぜ中国は今回に限って強硬な日本攻撃をしているのだろうか。歴代内閣と同じことを言っているのに、なぜ高市首相の発言には噛(か)みついたのだろうか。この疑問に答えているのがやはり週刊新潮(同)の「『中国軍』“本当の実力”」だ。
その中で伊藤教授は「そもそも中国軍は台湾有事になっても勝てないと見ている」と述べる。「戦争では、攻める側は守る側の3倍の兵力が必要になり、海を挟むと5倍は要ると言われています。現状の中国軍の輸送力では、5万~6万人しか台湾に兵を上陸させられ」ないからだ。
軍の一部、習氏に反感
これは軍事の側面から見ればそうだろうということだ。しかし戦争は人間が行うこと。人事の争いがあれば、物事は思い通りには進まない。その側面から中国軍の内情を見ているのが「中国軍の研究家であり、外務省中国課への出向経験もある田中三郎氏」だ。「中国に戦争などしている余裕」はなく、習近平国家主席が「軍部の一部から強い反感を持たれているよう」だと説明する。
習主席は「江沢民や胡錦濤といった歴代主席の流れを汲む人物を排除」しようとしており、「9~10月にかけて、党中央委員会の全体会議の開催直前に、軍高官が10人以上、汚職で処分されて軍籍を剥奪され」たという。さらに北京で軍部隊同士が衝突したという情報がネットで伝わったとも。
内情はだいぶガタガタなのかもしれない。軍の中には自衛隊機にわざわざレーダー照射までして「習主席の信頼を取り戻そう」という“忖度(そんたく)合戦”“忠誠合戦”が行われている可能性を前述の杉浦氏は指摘している。
落としどころの分からない日中の“チキンレース”。せめて相手を一方的に利する報道だけは慎んでほしい。






