トップオピニオンメディアウォッチ山上被告による「テロ」の目的達成を“幇助”するのか、鈴木エイト氏

山上被告による「テロ」の目的達成を“幇助”するのか、鈴木エイト氏

事件は計画的なテロ

 安倍晋三元首相銃撃事件の被告、山上徹也(45)に対する裁判。2日の公判で、事件前日、教団関連施設の入るビルに手製銃を発射した目的を、検察官から問われた山上は次のように語った。「教団に怒りを感じていると示すため。一般社会では、安倍氏と教団との関連性は深いとは思われていない。示しておかないと理解されないと思った」

 さらに裁判所から「安倍氏以外の政治家は対象にならなかったのか」と問われると、「旧統一教会と政治の関わりの中心にいると思っていたので、安倍氏以外の政治家では意味が弱いと思った」と語った。山上自身の口から、事件は計画的なテロだったことが示されたのだ。

 事件から間もなくして、日本大学危機管理学部教授の福田充は「政治と暴力―安倍晋三銃撃事件とテロリズム」を上梓(じょうし)した。一般的にテロは政治的意図で起こされると言われるが、福田は「政治的インパクトを持つという意味では、容疑者の犯行動機が政治的ではなく私的怨恨であっても」テロと呼ぶことができ、銃撃事件は「要人暗殺テロ」と分類できると指摘した。テロが政治的影響力を持つのは、メディアやジャーナリストが犯行の動機などに焦点を当てて報道するからである。

検証に専門家は警鐘

 一方、事件をテロとすることを嫌う人物がいる。長い間、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を取材してきたことで、裁判を報じるメディアに頻繁に登場する鈴木エイトだ。

鈴木エイト著『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)

「なぜ誰も山上被告を止められなかったのか?」をテーマにした動画番組ABEMA Prime(11月27日)。旧統一教会への怨(うら)み、元首相と教団との関係などの検証は「やりようによってはテロリストの主張の垂れ流しになる」と、司会者は語ったが、鈴木は「一種のテロだと先に言ってしまうと、思考停止になる部分がある。テロだと認定をさせてしまった瞬間に、テロリストの言い分を流しちゃいけないよね、となってしまう」から、テロ認定は「待ってほしい」と、事件の検証を主張した。

 だが、専門家の意見は違う。国際政治学者の細谷雄一は事件後、ツイッター(現X)で、テロ検証に警鐘を鳴らした。「テロリズム研究では、テロリストの犯行の背景を理解しようという姿勢自体が、テロリストの目的達成を幇助するということが一般的理解」(2023年4月18日)。事件の検証はテロ幇助(ほうじょ)になるというのに、鈴木が検証にこだわるのはなぜか。

 11月25日の公判で、弁護人から「旧統一教会による被害について、どこから情報を得ていたか」と問われた山上は「ネット、元信者が書いているブログなどだが、一番見ていたサイトは『やや日刊カルト新聞』だ」と明らかにした。鈴木は長らく、この新聞を中心に、教団を批判する活動を行ってきた。

 また「山上被告の事件前のメッセージ内容から考えて、彼が安倍晋三と統一教会との関係について知ったのは私の記事によるということはほぼ明白だ」(著書「『山上徹也』とは何者だったのか」)と、山上に対する自身の影響を隠さない。さらには「この両者の関係性を明確な根拠を以て語ることができるのは私しかないと改めて実感」と、自身の力を誇示するようなツイート(22年7月12日)も行っている。

怨みを煽ったSNS

 これらを総合すると、鈴木が書いた記事をはじめSNSなどで得た情報で教団への怨みが煽(あお)られ、それが元首相と結び付き、テロが正しいと思い込んだと考えられる。いわゆる「エコーチェンバー」が凶悪事件につながったと言える。

 テロ認定は「待て」と語る鈴木だが、事件から1週間後に次のツイートを行っている。「現在、私が警戒しているのは、この事件が社会を巻き込んだある種の劇場型犯罪であり、山上徹也容疑者の描いた絵の通り進行しているのではないかということ。もし仮にそうだとすると、次は私が“キャスト”として登場させられる可能性もある」

 事件検証は、山上のテロ目的達成を幇助し、彼の描いた絵を完成させることになるのだろう。(敬称略)

(森田清策)

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