他社の言説を貶める
朝日は「慰安婦虚偽報道」で2014年に関連記事を取り消したが、これを検証した朝日の第三者委員会で委員を務めた故・岡本行夫氏(外交評論家)は朝日社員から何度も「角度を付ける」という言葉を聞かされたという。自らの方向性に沿うように紙面を作ることを社内ではこう言っていた。同委員の北岡伸一国際大学学長(当時)も「自らの主張のために、他者の言説を歪曲ないし貶める傾向」を指摘している(朝日14年12月23日付「検証委報告」)。
こんな“故事”を想起したのは、高市早苗首相の「存立危機事態」を巡る答弁に対して朝日が盛んに角度を付けて報じているからだ。11月7日の衆院予算委員会で、高市首相は台湾有事で来援した米軍に対して中国の軍艦による武力行使があった場合、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に当たる可能性があるとの見解を示した(各紙11月8日付)。従来の政府答弁は曖昧戦略で抽象論に終始したが、首相は立憲民主党の岡田克也氏から執拗(しつよう)に質問され、具体例に踏み込んだ。

これに対して中国は「汚い首斬る」発言(薛剣(せつけん)駐大阪中国総領事)、渡航自粛、水産物の輸入停止、国連での「旧敵国条項」発言など対日批判をエスカレートさせ、日中関係は冷え込んでいる。
だが、高市首相の支持率は冷え込みとは無縁だ。各紙世論調査での支持率は時事通信63・8%(本紙同14日付)、共同通信69・9%(地方紙同17日付)、朝日69%(同17日付)、毎日65%(同24日付)、産経75%(同25日付)、日経75%(ネット版同30日付)と高水準だ。「存立危機事態」答弁について毎日調査では「問題があった」としたのは25%にとどまり、「問題があったとは思わない」が50%。産経調査でも「適切」が61%に上っている。
まるでマッチポンプ
ところが、朝日は同答弁を「『存立危機』踏み越えた首相」(同8日付「時時刻刻」)「歯止め緩める首相答弁」(同社説)と、あたかも「存立危機事態」の概念を踏み越え、「歯止め」を外して武力行使するかのように角度を付けて、あげつらう。
朝日のネット速報(同7日)では当初、「首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』認定なら武力行使も」と事実に反するタイトルを掲げ、薛剣総領事の「汚い首斬る」のX(旧ツイッター)はこのネット速報を引用していた。実際の答弁は「武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高い」で、朝日は後に「認定なら武力行使も」を「武力攻撃の発生時」と修正している(産経ネット同21日など)。ネット速報は中国への“ご注進”なのか、まるで朝日のマッチポンプを思わせた。
国会での党首討論を報じた朝日同27日付1面トップは「台湾有事『聞かれたので』首相、答弁を釈明」と、高市首相を小ばかにするような見出しを掲げ、社説では「誠実とは遠い首相答弁」と批判し、答弁撤回を暗に迫る。
いわゆる「虚偽報道」
トランプ米大統領は11月25日、中国の習近平国家主席に続き、高市首相と電話会談したが、ワシントン時事は「首相の『台湾有事』を巡る発言」による日中関係の緊張に対して日本に配慮したとみられるとしているが(本紙同26日付)、朝日は3日遅れの同28日付1面トップで「日中対立『沈静化を』トランプ氏、電話協議で高市氏に」と首相があたかもトランプ大統領に叱られたかのような見出しで報じた。
「沈静化」は日本政府関係者(と朝日が書く)の話で、トランプ大統領からそうした「認識が示され、そのために日米が連携していくことを確認」したというもので、トランプ氏自身の発言ではない。それを鉤括弧(かぎかっこ)であたかも大統領の言葉のように報じ、答弁撤回や批判がなかったのに「答弁 米側の支持得られず」(2面見出し)と断じている。高市首相の「孤立」を狙って角度を付けたようだが、世間ではこんな「角度付け」を虚偽報道と呼ぶのである。
(増 記代司)





