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シリアのクルド人勢力を巡る対応で警告を発するクルド・メディア

ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と会談したシリアのアハメド・アル・シャラー大統領(2025年11月10日/UPI)
ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と会談したシリアのアハメド・アル・シャラー大統領(2025年11月10日/UPI)

国を持たぬクルド人

 シリアでは昨年12月に長期にわたって独裁体制を敷いてきたアサド政権が崩壊し、シャラア暫定政権の下で、再建が進められている。

 シャラア氏は反政府勢力シャーム解放機構(HTS)の指導者。HTSはかつて国連にテロ組織に指定されていたが、今や国家再建の立役者だ。11月10日には米ホワイトハウスでトランプ大統領と会談、復興への支援を取り付けた。

 中東北部のシリアの再建で重要となるのが同国北部のクルド人勢力で、200万人程度とされている。クルド人居住地はトルコ、シリア、イラク、イランに広がり、全体で数千万人と言われている。

 そのクルド人がシリア政権とどういう関係を築けるかどうかが、今後のシリアの動向、さらには、中東情勢にも影響を与えるようになることは必至だ。

 クルド系スウェーデン人のジャーナリスト、スーザン・キタズ氏はイスラエル紙エルサレム・ポストへの寄稿で、歴史的にユダヤ人とクルド人は、良好な関係を保ってきたと主張、「特にシリアとイラクのクルド人は、アラブ系の人々に比べて、ユダヤ人とイスラエルに対してより肯定的な見方を示すことが多い」と指摘している。どちらも長い間、国を持たず迫害を受けてきたことが両者の共通項だ。

 ユダヤ人は、世界に散らばったものの、1948年に国を持つことに成功した。一方のクルド人は、国を持たず、トルコでは反政府活動で多くの犠牲者を出す一方、イラクでは長い戦いの末、北部に自治政府を樹立した。

 シリアのクルド人は過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦で、米軍と協力したことがよく知られている。

内戦再発の可能性も

 イラクのクルド人自治区ドホークにあるクルディスタン・アメリカン大学で11月、中東平和安全保障(MEPS)フォーラムが開催された。地域の政治家、中東問題の専門家らを招き、毎年開催されているフォーラムだ。キタズ氏は、フォーラムの最大の成果は「イラクとシリアのクルド人の間の団結を示したことだ」と強調する。会議に参加したクルド人自治政府のバルザニ議長は、クルド人の分裂と内部分裂を招いた「過去の過ちを繰り返さない」よう訴えたという。クルド人の正当な自治の権利を軽視しないよう、シリア暫定政権にくぎを刺した格好だ。

 またフォーラムには、米国が支援するクルド人主導のシリア民主軍(SDF)のマズルーム・アブディ司令官が参加。キタズ氏は、これはシリアのクルド人の自治行政区「ロジャバ」の存続を認めるもので、「シリア政府を激怒させた」としている。

 シリア政府は現在、自治を求めるクルド人勢力と対立、武力衝突も発生するなど今後の両者の関係はいまだ、明確になっていない。一つ間違えば内戦の再発の可能性もある。クルド人と対立するトルコがシリア政権に強い影響力を持っていることも対立の一因だろう。

自治継続支援求める

 イラクのクルド人自治区の放送局「ルダウ」によると、アブディ氏は国際社会に対し、「新生シリアを築く取り組みでロジャバにも平等な機会を与えるよう」支援を呼び掛けた。またIS掃討作戦で米軍と協力するなど「クルド人は過去にどの勢力に対しても脅威を与えておらず、今後も与えないことを証明してきた」と強調、自治の継続への支持を求めた。

 遡(さかのぼ)れば、旧オスマン帝国領の分割を定めた1916年の「サイクス・ピコ協定」によって一方的にシリア、イラクの国境線が引かれ、クルド人居住地域は分断された。

 イラクのクルド系メディア「クルディスタン24」によると、フォーラムで講演したイラクのクルド自治区のアハメド内相は「歴史的な不正、特に未解決のクルド問題に取り組まなければ、イラクとシリアの永続的な平和は実現できないだろう」と警告しており、一つ間違えば、シリアのクルド人への対応が今後の中東の火種の一つになりかねない。

(本田隆文)

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